2013年4月7日日曜日

H23年 企業経営理論 第13問

H23年 企業経営理論 第13問

■問題

動機づけに関する概念モデルの1つに「職務特性モデル」がある。この概念モデルについての記述として、最も不適切なものはどれか。

(ア) 個人の動機づけは、仕事の業績評価システム、上司や先輩を通じてのフィードバックの程度に影響される。
(イ) 個人の動機づけは、仕事の出来栄えが社内の人々や顧客に、どれほどのインパクトをもたらすかの程度に影響される。

(ウ) 個人の動機づけは、仕事の流れの全体像にかかわっている程度に影響される。

(エ) 個人の動機づけは、仕事をうまく遂行する上で必要なスキル(技能)の多様性の程度に影響される。

(オ) 個人の動機づけは、担当する仕事の範囲で、自主的に工夫して仕事のやり方を決められる程度に影響される。



■解答

× (ア) 個人の動機づけは、仕事の業績評価システム、上司や先輩を通じてのフィードバックの程度に影響される。

■考察

職務特性モデルの概念について理解しているかを問う問題で、組織行動論、モチベーション理論などに絡む問題だと思います。

そもそも、モチベーション理論に関して詳しくないので、この問題がモチベーション理論のどのポイントについての問題なのかを確認するために、モチベーション理論から学習して考察したいと思います。

モチベーション理論

個々を行動に駆り立てるものは何なのか、また、どのようなプロセスで駆り立てられるのかに関する理論。 → いかにして組織目的と個人目的を結び付けていくかを研究したもの。

モチベーション理論について、以下のフレームに沿って確認していきたいと思います。このフレームは中小企業診断士2013年度版スピードテキスト企業経営理論(TAC株式会社発行)を元に一部加筆して作成しました。

職務特性モデルは内発的動機付け理論に属します。


内容理論

内容理論は理論間で関連があるようなので、図にまとめてみました。5レンジャーみたいになっていますが、人毎に色分けしています。


図には纏めませんでしたが、残るマクレランドの欲求理論は以下のような理論のようです。

「作業場における従業員には3つの主要な動機ないしは欲求が存在する」という理論で、この理論は、マズローの欲求段階説やアルダファーのERG理論のような階層構造を持たないようです。

3つの欲求は以下のような欲求です。
  1. 達成動機(欲求)(nAch : need for achievement)
    ある一定の標準に対して、達成し成功しようと努力する

  2. 権力動機(欲求)(nPow : need for power)
    他の人々に、何らかの働きかけがなければ起こらない行動をさせたいという欲求
  3. 親和動機(欲求)(nAff : need for affiliation)
    友好的かつ密接な対人関係を結びたい、という欲求
特に達成動機は後のコンピテンシー理論として大きく発展することになったようです。

特徴としては

達成動機を持つ人の人間観
責任感が強く、責任は個人に帰属させる傾向があり、中程度のリスクを好み、自分でコントロールが可能な範囲で動機付けが起こり、結果のフィードバックを強く望みます。

権力動機を持つ人の人間観
同じく責任感は強く、特に責任を与えられることそのものが動機付けになる→ジョブエンリッチメントが有効に働くようです。他者から指示されるより、指示する方を好みで、競争を好みます。

親和動機を持つ人の人間観
他者から好かれたい、よく見られたいという欲求があり、よい人間関係を作りたい傾向がある人です。

以上、「何によって動機付けられるか?」についてまとめましたが、十人十色という単語もあるように、自分が、または、他者が、どのような欲求に基づいて動機づけされているのか、もしくは、動機付けされるという受け身な立場ではなくどのようにすればやる気が出るか、という事についてはパターンや傾向こそあれ、全てを網羅するのはかなり難しいと思いました。

重要なのは、こういった理論を把握しつつ、相手の視点に立ち、どのような欲求を抱えているかを素早く理解できるようになることかと理解しました。

何によって動機付けされるかを学んだところで、続いて、「どうやって動機づけするか?」についてを説く、過程理論について確認していきたいと思います。


2013年3月6日水曜日

H23年 企業経営理論 第12問

H23年 企業経営理論 第12問

■問題

企業組織は、一般に分業と協業のシステムとして階層性という特徴を持っている。この組織編成に関する記述として最も適切なものはどれか。

(ア) イノベーションを目的とした組織においては指揮命令系統の一元性が確保されていなければならないので、階層組織よりはグループ型のフラットな組織が望ましい。

(イ) 管理者の職務に関する事業の範囲やタイムスパンの責任に応じて、組織は階層を設計する必要がある。

(ウ) 組織における職務の公式化を進めることによって、管理者の統制範囲(span of control)は狭くなるので、階層数は増える傾向にある。

(エ) 組織の階層を構成する中間管理職の職務について、責任と権限が公式に一致しなければならない。

(オ) 不確実性が高い環境下では、分権化を進めるために、階層のないフラットな構造にすることが望ましい。


■解答

○ (イ) 管理者の職務に関する事業の範囲やタイムスパンの責任に応じて、組織は階層を設計する必要がある。

■考察

組織について考える問題です。まずは組織』の言葉の定義について確認したいと思います。

言葉の定義

組織 (社会科学)
社会科学における組織(そしき、英: organization)とは、共通の目標を有し、目標達成のために協働を行う、何らかの手段で統制された複数の人々の行為やコミュニケーションによって構成されるシステムのことである。

経営学における組織
経営学においてしばしば引用されるチェスター・バーナードらは、組織を協働の体系(システム)として捉えている。

  • 意識的に調整された、2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステム (Barnard, 1938)
  • 1人の人間の力では実現できないような困難な目標を達成しようとするときに生じる複数の人間の協同(経営学用語辞典、1997)
組織における意志決定プロセスに注目したハーバート・サイモンは、コミュニケーションのパターンに注目している。
  • 意志決定とその実行の過程を含めた、人間集団におけるコミュニケーションとその関係のパターン (Simon, 1945)
wikipedia組織 (社会科学)より引用


では、組織の定義を理解したとことで、次に構造について理解したいと思います。
組織構造には組織構造の設計原理というものがあるようです。

組織構造の設計原理
  • 専門化の原則

    組織の活動が特殊化された役割に分割された状態(専門)にするという原則。
    例えば、営業部(営業活動に特化する)、生産部(生産活動に特化する)というように役割を分割して得意とする分野を、知識のや能力の集中的な利用や反復利用ができるような状態を作りましょう。という内容です。
  • 権限責任一致の原則

    各組織の構成員(例えば社員)に与えられる権限の大きさは担当する職務(仕事)相応しい事と、相応しい責任が負わされなければならない、という原則です。例えば新入社員で役職もない人社員(担当者)に、企業間提携の合意(契約の締結)の権限や責任を押し付けてはだめです。という事です。
  • 統制範囲の原則(スパンオブコントロール)

    統制範囲とは1人の上司が有効に指揮監督できる直接の部下の人数の事です。管理者の数を削減したくて、統制範囲を広げようとしても管理限界を超えると管理効率が下がります、という原理であり、一定量を超えないようにしましょう、という原則です。

    統制範囲を広げるためには
    • 管理者の例外処理能力を上げる
    • 下位メンバーの能力を高めて例外処理の判断ができるようにする
    • 公式化標準化を進めて管理負荷を下げる
    • スタッフ部門を強化して管理負荷を下げる

    という工夫が必要になります。
  • 命令統一性の原則

    組織秩序維持のために、職位(課長や部長など)の上下関係において、各組織構成員は常に特定の一人の上司からだけ命令を受けるようにしなければならない、という原則です。他部門から指示されたり、とんでもなく上位の人から「このプロジェクトしなさい」と指示を受けたりしてると混乱してしまいますよという事です。
  • 例外の原則(権限移譲の原則)
    意思決定には
    • 定型的意思決定
    • 非定型的意思決定

    があり非定型的意思決定の中に戦略的意思決定があります。定型的意思決定はあらかじめ決められた手続きで処理が可能なものを指すため、これら、定型処理が可能なものについては下位の職位の人に権限を委譲し、非定型的意思決定に専念すべきである、という原則です。
続いて、分業と協業について確認していきます。

分業と協業


組織には、複数人で共通の目標を達成するにあたって必要な組織全体の仕事やタスクの分業と調整を行うメカニズムが必要である。共通の目標が人々によって共有されていても、個々人が個別的に仕事を遂行するならば、それは組織とは言わない。
  • 分業:組織全体の仕事を分割し、個々人に割り当てること
  • 調整:分割され個々人に割り当てられた仕事を統合し、組織全体の仕事として完成させること
wikipedia組織 (社会科学)より引用

組織構造の設計原則に基づいて専門化(分業化)するとともに、調整を行うメカニズムが必要になってきますが、まずは、分業の種類である機能分業階層分業について確認します。


図のように、
  • 機能分業では水平方向に業務を分化(製造や購買・・・)します。の例のような組織形態は機能別組織と呼ばれています。
  • 階層分業では垂直方向に人間行動を階層分けて、管理階層を設けます。ここで人間行動は管理行動である経営者行動(トップマネジメント)と管理者行動(ミドル、ロワーマネジメント)、作業行動の3つに分けることができます。図の例ような組織形態は事業部制組織と呼ばれています。
分業化で組織全体の仕事を分割し、個々に仕事を割り当てたら、次に組織として機能するようにするための、“分業と調整あり方を決定する 組織編成について確認します。

ラインとスタッフ(組織構造の基本概念)
まず、組織構造を決めるうえでの基本概念であるライン(直接的職能)とスタッフ(間接的職能)について確認します。
  • ライン:経営活動の基本職能
    (生産部門、購買部門、販売部門など、欠落すると経営活動が成り立たなくなるような職能)
  • スタッフ:ラインの活動を支援する職能
    (財務部門、広報部門、総務、システム関連部門などラインの活動を支援する職能)
スタッフはラインへの助言・補佐を行うことを目的としており、ラインへの直接的な命令の権限を持ちません。


組織 構造の種類

組織構造の種類は様々あるようですが、主に次の3つがあるようです。

組織構造の種類 メリット デメリット
機能別組織 ・分業による専門性の発揮
専門化の原則
・分業による規模の経済の発揮
・組織統制を図りやすい
命令統一性の原則
・全体的な意思決定に専念しやすい
・利益責任の所在が不明確
・全体が見れるマネージャーが育ちにくい
・組織間の連携が悪くなる
・1人の上位者に権限が集中し、責任過大となり負担が大きい
事業部制組織 ・トップマネジメントの管理業務負荷軽減に伴い、戦略意思決定の割合増。
・全体が見れるマネージャーを育成しやすい
・仕事の責任分担が明確になる
・従業員の勤労意欲が向上する
・セクショナリズム、部分最適化が起こりやすい
・全社利益よりも部門利益を追求してしまうこりやすい
・管理スタッフや研究開発などの重複で人件費増大

マトリックス組織 ・機能別組織の特徴である専門性と事業部制組織の特徴である権限の分権を両立できる
・人的資源が共有できるため、課題に柔軟に対応できる
・情報共有化が速い
・上司が2人になることから組織内のコンフリクトが発生しやすい
・責任の所在が不明確になる

官僚制組織と組織構造の動態化

官僚制組織

効率を追求する組織は官僚制組織の色を濃くしていくため、官僚制組織が"過度"に進行した場合官僚制の逆機能と呼ばれる問題が生じることがあります。

官僚制組織とは

高度に専門化された職務が、権限・責任を基礎としたピラミッド型の階層を形成し、その中の構成員は規則に基づいた没主観的判断によって職務を遂行することを要求される組織構造特性[1]

の事で役所仕事、マニュアル人間と悪く言われているようなものが官僚制の逆機能という問題の一部に当たります。具体的には下記の6項目
  1. 訓練された無能 ・・・ 個人の意思決定のパターンが硬直化
  2. 最低許容行動 ・・・ 規則通りの行動しかしなくなる
  3. 顧客の不満足 ・・・ 人間関係の非人格化に伴った顧客目線の欠落
  4. 目標置換 ・・・ 規則の順守(手段)が目的になってしまう
  5. 個人的成長の否定 ・・・ 効率的面が追求されすぎるあまり、個人の成長が阻害される
  6. 革新の阻害 ・・・ 革新を行う力や動機がなくなる
しかしながら、組織のライフサイクルの過程をたどる中で、官僚制組織は必要になってきます。なぜなら効率がいいからです。ここで問題にすべきは官僚制組織の中でいかに硬直化を防ぐか、という点だと思います。
動態化

組織の硬直化を克服すべく、以下のような管理手法があるようです。
  • 組織構造のフラット化
    中間層をなくすことで柔軟かつ迅速な意思決定を実現する
  • プロジェクトチームの導入またはマトリックス組織の導入
    特定の課題を解決することを目的に、縦の組織だけでなく横の組織を作る。
  • リエンジニアリング
    業務プロセスを抜本的に見直して企業体質や構造を変革する。
  • 組織変革やモチベーション向上対応など
ここで一度問題に戻ります。

(ア) イノベーションを目的とした組織においては指揮命令系統の一元性が確保されていなければならないので、階層組織よりはグループ型のフラットな組織が望ましい。

指揮命令系統の一元性が確保されていなければならない、という記述が大きな誤りであると考えます。イノベーションを目的とするならば、様々な意見交換や情報流通が大事になると考えます。その際には、、柔軟な課題解決が可能な組織体制が必要になると思われるためフラット組織よりもプロジェクトチームやマトリックス組織のようなものがより適しているように思います。

(イ) 管理者の職務に関する事業の範囲やタイムスパンの責任に応じて、組織は階層を設計する必要がある。

タイムスパンと書かれているのでプロジェクトのようなものも想定された文章だと思われます。長期なら長期の、事業の規模・範囲に応じた組織を作る必要があるので正解ではないでしょうか。

(ウ) 組織における職務の公式化を進めることによって、管理者の統制範囲(span of control)は狭くなるので、階層数は増える傾向にある。

組織設計の設計原則にありましたが、職務の公式化を進めることによって、管理者の統制範囲は広くなります。

(エ) 組織の階層を構成する中間管理職の職務について、責任と権限が公式に一致しなければならない。

権限責任一致の原則に“各組織の構成員(例えば社員)に与えられる権限の大きさは担当する職務(仕事)相応しい事と、相応しい責任が負わされなければならない”とあるのですが、公式にが意味不明です。公式というのが「文面化された」という事を意味するならば、文面化されてなければ問題になるのかという話になってきます。そういう問題じゃなく、責任と権限は一致しないといけないと思われますので不適切かなぁ・・・。

(オ) 不確実性が高い環境下では、分権化を進めるために、階層のないフラットな構造にすることが望ましい。

分権化を進めたいなら機能分業と階層分業をを進めないとだめなので、フラットな構造にはならずピラミッド構造(ヒエラルキー)になります。また不確実性が高い環境下では柔軟な対応が必要になるケースが多いので、分権化を進めることが誤りです。

2013年3月3日日曜日

H23年 企業経営理論 第11問

H23年 企業経営理論 第11問

■問題

グローバル化の進展とともに日本企業が海外に工場を開設する動きが活発化している。しかし、海外進出は国際化に必要な経営資源が不足する中小企業にとっては容易ではない。そのため中小企業では商社に仲介を受けながら、現地パートナーと合弁企業を営む例が見られる。そのような海外進出で考慮すべき点の記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) 現地のパートナー企業の技術力が弱い場合、商社を介在して高品質の原材料を持ち込んだり、進出企業による現地での技術指導を通じて製品の品質が低下しないようにすることは重要な経営のポイントになる。

(イ) 現地のパートナー企業や現地国はわが国の企業の進んだ技術の移転を求めているが、自社技術の保護の観点から、商社等に協力してもらって、合弁事業開始前に、守るべき技術や製品の模倣禁止等に関して詳細な規定を含む合弁事業契約をパートナー企業と締結しておくことが重要になる。

(ウ) 合弁事業の出資割合は出資企業がその比率に応じて合弁事業の経営に努力を傾注する程度を示すが、商社や現地企業は概してその経営努力とは無関係に配当を要求することでトラブルになることに注意することが重要になる。

(エ) 商社が、情報能力を活かして進出企業に現地の各種情報を伝えたり、現地の法務等の対応を図ってくれるので、進出企業は現地国で工場のオペレーションに経営努力を傾注できる利点がある。

(オ) パートナー企業の合弁事業以外での業務実態について見落とすと、守秘義務条項や競合禁止条項が破られ、製品の模倣が行われ、現地市場を失うばかりか、進出企業の信用を失墜しかねないので、現地駐在社員の現場の監視能力の向上を図ることが重要である。

■解答

(ウ) 合弁事業の出資割合は出資企業がその比率に応じて合弁事業の経営に努力を傾注する程度を示すが、商社や現地企業は概してその経営努力とは無関係に配当を要求することでトラブルになることに注意することが重要になる。

■考察

商社や現地企業は概してその出資割合に応じた利益配分が行なわれている。したがって、勝者と進出日本起用との間のトラブルは少ない。
と、必ず受かる中小企業診断士に記載されていました。

この問題は利益配分について理解していないとダメみたいですね。。。


H23年 企業経営理論 第10問

H23年 企業経営理論 第10問

■問題

ベンチャー企業と大学や研究機関が連携を図り、イノベーションに取り組む動きが多く見られるようになった。そのような状況や提携に際して考慮するべき問題点についての記述として最も適切なものはどれか。

(ア) オープン・イノベーションを推進するために、大学とベンチャー企業が連携して、大学から独立した研究機関を設ける試みが行われているが、ベンチャー企業の資金力が弱いので、そのような研究機関から技術イノベーションが生まれることはほとんど見られない。

(イ) 行政による産業クラスター等の技術支援施策を受けて、わが国では大学や研究機関の技術の民間への移転が活発であり、その結果株式公開に至るベンチャー企業が多く生まれている。

(ウ) 国立大学法人が他機関との技術連携をする場合、知財本部やTLOを通じることが義務づけられているため、技術提携コストや調整の負担がかさむことになるが、そのことがベンチャー企業の国立大学との連携を難しくしている。

(エ) 大学発ベンチャーが大学や研究機関と連携しながら、自前の技術を進化させたり、不足する技術力を補うことが行われているが、事業として発展するには企業者能力が重要になる。

(オ) 米国に比べてわが国では大学発ベンチャーはあまり成功していないが、その理由として技術開発者の大学教員が経営に直接関与することが禁じられていることを指摘できる。

■解答

(エ) 大学発ベンチャーが大学や研究機関と連携しながら、自前の技術を進化させたり、不足する技術力を補うことが行われているが、事業として発展するには企業者能力が重要になる。

■考察

(ア) そのような研究機関から技術イノベーションが生まれることはほとんど見られない。という一文が誤りだと思い、『大学とベンチャー企業が連携して、大学から独立した研究機関が生んだ技術イノベーションの事例』を探そうとしてみましたが、わかりやすい事例を探し当てることができませんでした。おそらくiPS細胞関連やナノテクノロジー関連における事例があると思われるのですが・・・。もしどなたかわかりやすい事例をご存知の方がいらっしゃれば是非紹介して頂きたいです。

(イ) その結果株式公開に至るベンチャー企業が多く生まれている。上記(ア)でイノベーションが生まれるという事が正解である、と記載しましたが、『技術イノベーションが生まれているが、その結果株式公開している企業が多く生まれているか?』と問われると"NO"になるのだと思います。そのため、事例を探し当てることが難しい要因になっているのだと思います。

(ウ)については個別に用語から確認していきたいと思います。
国立大学法人が他機関との技術連携をする場合、知財本部TLOを通じることが義務づけられているか?技術提携コストや調整の負担がかさむことになるか?





知的財産戦略本部

知的財産戦略本部(ちてきざいさんせんりゃくほんぶ)は、知的財産基本法第24条の規定に基づき、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため、2003年5月に内閣に設置された機関。知的財産推進計画の作成及び実施の推進を主要な業務としている。長である知的財産戦略本部長は内閣総理大臣が務める。実体的には、知的財産戦略会議の役割を引き継ぐ機関であると考えられる。
また、政府の知的財産戦略本部にならい、各地域及び農林水産省にも同名の機関が設けられている。大学においても、同名の機関を設けた例がある。
wikipediaの知的財産戦略本部より引用

技術移転機関(TLO)

技術移転機関(ぎじゅついてんきかん、英: Technology Licensing Organization,TLO)は「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(大学等技術移転促進法、TLO法(経済産業省と文部科学省の所管。1998年に制定・施行。))に基づき事業計画が承認・認定された技術移転事業者を指す。大学の研究者の研究成果である発明(特許)を民間企業等へ技術移転(Technology Licensing)することを主要業務とし、産学連携の仲介役・中核の役割を果たす。
wikipediaの技術移転機関より引用

知的財産戦略本部は”知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため、2003年5月に内閣に設置された機関”ですしTLOは”産学連携の仲介役・中核の役割を果たす”ための事業者であることからも義務付けられているかどうかまで調べれませんでしたが、コストや負担の増加が発生しているのであれば本末転倒な組織・事業者という事になってしまいます。故に”NO”だと思われます。

結果、ベンチャー企業の国立大学との連携を難しくしているか?については連携の負担を軽減している、が、正解だと思います。

(オ) 技術開発者の大学教員が経営に直接関与することが禁じられているかについて調べたところリサーチアドミニストレータという用語を見つけました。

リサーチ・アドミニストレーター

リサーチ・アドミニストレーター(Research Administrator)とは、企業や大学、研究所などの高等教育研究機関において、研究面から経営・運営に直接的に関与する上級管理職、役員級職のことである。トップダウンの支配命令型リーダーではなく、調整管理型リーダーであるサーバント・リーダーとしての役割を担う役職である。

株式会社などの企業で言えば執行役員級の管理職であり、上級(シニア)職は取締役級の職位(例えば、最高技術責任者(CTO))である。現在、リサーチ・アドミニストレーターの一般的な日本語訳は存在せず、企業では、RA(Research Administrator)、大学や研究所などの高等教育研究機関では、URA(University Research Administrator)と呼ばれることが多い。本項においては、RA、URAとして記載する。
wikipediaのリサーチ・アドミニストレータより引用

wikipediaによると、この役割については北海道大学や岡山大学における運用実績があるようです。ですから禁じられていないという事になるかと思います。

しかしながら実際問題、米国に比べてわが国では大学発ベンチャーはあまり成功していないようです。この点については一度なぜ成功していないのか、現在の国内における法律なども含めて今後学習してみたいと思います。

■ご参考

知的財産基本法

知的財産基本法(ちてきざいさんきほんほう、平成14年12月4日法律第122号)は、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を推進することを目的とし、そのために行うべき施策について定めた日本の法律である。2002年12月4日に公布され、2003年3月1日に施行された。

主要な規定

  • 「知的財産」及び「知的財産権」を定義(第2条)
  • 知的財産の取り扱いに関する国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明確化(第5~8条)
  • 基本的施策
    • 研究開発の推進(第12条)
    • 研究成果の移転の促進(第13条)
    • 権利の付与の迅速化(第14条)
    • 訴訟手続の充実及び迅速化等(第15条)
    • 権利侵害への措置の強化(第16条)
    • 国際的な制度の構築(第17条)
    • 新分野における知的財産の保護(第18条)
    • 知的財産を活用する環境の整備(第19条)
    • 情報の提供(第20条)
    • 教育の振興(第21条)
    • 人材の確保(第22条)
  • 「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」(知的財産推進計画)の作成(第23条)
  • 知的財産戦略本部の設置(第24条)
wikipediaの知的財産基本法より引用

2013年2月16日土曜日

H23年 企業経営理論 第9問


H23年 企業経営理論 第9問

■問題

技術開発に必要な経営資源を「技術革新において中核となる技術上のノウハウ」とその「補完資産」とに分けて考えた場合、ハイテク・ベンチャー企業に関する記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) 多くの顧客に対して販売促進活動を行い、顧客からの注文を受けて製品を届け、対価を受け取っている企業は、補完資産としての販売力を自社で保有している。

(イ) 技術革新を商業化して経営成果として結実させるために必要なマーケティングやアフターサービスの活動に関する能力は補完資産として重要である。

(ウ) 少数の特定の顧客企業が自社の大部分の製品を購入している場合、補完資産としての販売力を自社で保有している。

(エ) ハイテク・ベンチャー企業の「技術革新において中核となる技術上のノウハウ」は中核能力として位置づけられ、その獲得は技術革新実現の必要条件である。

(オ) ハイテク・ベンチャー企業の「技術革新において中核となる技術上のノウハウ」を価値連鎖として完結するために、補完資産の外部への依存を考慮することは重要である。

■解答

× (ウ) 少数の特定の顧客企業が自社の大部分の製品を購入している場合、補完資産としての販売力を自社で保有している。

■考察

(ア)の、多くの顧客に対して販売促進活動を行い、顧客からの注文を受けて製品を届け、対価を受け取る、というのまさに販売力なので、補完資産としての販売力を自社で保有しているといえると思います。

(ア)に対して(ウ)は、少数の特定の顧客企業が自社の大部分の製品を購入している場合、という記述からして販売力を自社で保有しているとは言い難いと思われます。
販売力という言葉の定義を調べきれていませんが、私なりに販売力という言葉を定義すると、「新しいユーザーに製品の価値を提案し、対価を得る、または、既存ユーザーに新たな価値(使い方など)を提案し、対価を得る」 という感じかと思っています。

少数特定の顧客企業から大部分の製品を購入いただいているとなると、販売力ではなく商品力が高い商品を保有しているのかな?という印象を受けました。

平成23年度 C 企業経営論 正解・配点一覧

平成23年度 中小企業診断士 第1次試験
C 企業経営論
正解・配点
出典:社団法人 中小企業診断協会


問題 設問 正解 配点
第1問
2
第2問 設問1 3

設問2 3
第3問
3
第4問
2
第5問
2
第6問
2
第7問 設問1 2

設問2 3
第8問
3
第9問
2
第10問
3
第11問
3
第12問
2
第13問
2
第14問
3
第15問
2
第16問
2
第17問
2
第18問
2
第19問 設問1 2

設問2 2
第20問
3
第21問
2
第22問
3
第23問
2
第24問
2
第25問
3
第26問 設問1 3

設問2 3
第27問 設問1 2

設問2 3

設問3 2
第28問
3
第29問
2
第30問 設問1 2

設問2 3
第31問 設問1 2

設問2 3
第32問 設問1 2

設問2 3

2013年2月4日月曜日

H23年 企業経営理論 第8問


H23年 企業経営理論 第8問

■問題

完成品メーカーと部品供給メーカーとの企業間の取引には、常に競争と協調の両面が存在する。そのような企業間の取引で発生する事態についての記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) 過剰な生産能力を持つ業界の部品メーカーA社は、過小な生産能力の業界の部品メーカーB社に比べて、高い利益率を獲得できる可能性は低くなる。

(イ) 部品メーカーC社は、4社の完成品メーカー各社に同じ量の部品を独占的に供給しているが、その部品の生産ラインにトラブルが発生したため、生産量を長期にわたって減らさざるを得なくなったにもかかわらず、利益率はむしろ増加傾向に転じた。

(ウ) 部品メーカーD社は、供給先の完成品メーカーE社との取引契約に、E社が他の部品メーカーに乗り換える場合D社に打診するという条項を結んでいるので、値引き要求や競合他社との受注争奪で有利になる可能性が高くなった。

(エ) 部品メーカーF社は、自社のみが生産できるある部品について取引の大きな完成品メーカーG社と最も有利な条件を自動的に適用するという契約書を結んでいるが、このことが他の完成品メーカーにも知られた結果、各社の値引き要求に屈して利益が激減してしまった。

■解答

(エ) 部品メーカーF社は、自社のみが生産できるある部品について取引の大きな完成品メーカーG社と最も有利な条件を自動的に適用するという契約書を結んでいるが、このことが他の完成品メーカーにも知られた結果、各社の値引き要求に屈して利益が激減してしまった。

■考察

(ア)は先日解いた第5問に似ています。結局のところ過剰な生産能力を持っている→生産設備を遊ばせている(稼働率が低い)→規模の経済が働かず単位原価が増す→高い利益率を獲得できる可能性は低くなる。という構図だと思われます。

(イ)は2011年に起きたタイの洪水被害などの例が当てはまるのではないでしょうか。

タイは日系企業の進出が3100社以上と多く、アユタヤ県、ローヂャナ工業団地に工場を構えるホンダ、ニコンの他、トヨタ、日産など大手自動車メーカーやソニー、東レ、TDK、チョンブリ県のクボタなど多くの被害が報告されており、10月22日までに日系460社が被害を被った。

タイは世界シェア30%に及ぶ第2位のHDD生産国であり、HDDメーカー大手であるウェスタン・デジタルとシーゲイト・テクノロジー、生産に伴う部品供給元である日本電産、レンズメーカーのHOYAなどは共にタイ国内に生産拠点を抱えている。そのためIT産業、とりわけPCメーカーに大きな影響を与え、HDDの高騰に繋がっている。

HDDの価格は記憶では4倍以上まで高騰していたように記憶しています。生産量は激減して、売上高も下がっているとは思いますが、各社HDDが必要であるため価格は高騰し、結果利益率としては上がったのだろうと思われます。

(ウ)については「ラスト・ルック条項」と呼ばれる契約があるそうです。別のブログに解説があったのですがリンクの許諾を得られていませんので得られ次第リンクを記載しようと思います。

(エ)については自社のみが生産できる、という事ですので、他の完成品メーカーに知られたとしても値段は吊り上る可能性はあるものの値引き要求に屈さなくてはいけない理由はないはずです。
よくわからないのが"G社と最も有利な条件を自動的に適用するという契約書を結んでいる"というところなんですが、これは、他の完成品メーカーとの取引で有利な条件を提示されたらG社にもその条件を適用するという意味なのでしょうか?

もしそうだとすると、差別化された製品はやはり価値が高いですね。恐るべし差別化です。

2013年2月3日日曜日

H23年 企業経営理論 第7問


H23年 企業経営理論 第7問

■問題

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

単一の事業を営む企業が多角化によって事業構造を変革し、持続的な成長を実現する行動は、「範囲の経済」の視点から説明できる。「範囲の経済」が存在すれば、企業が複数の事業を展開することによって。それぞれの事業を独立に営むときよりも、より経済的な事業運営が可能になる。

(設問1)
文中の下線部に関する以下の文章の空欄A~Cにあてはまるものの最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。

2つの製品の生産量をそれぞれ x1、x2で表し、その費用関数をC(x1, x2)で表したとき、「範囲の経済」の関係は以下のように示すことができる。

C(x1, x2)   A   C(x1, 0)   B   C(0, x2)

この関係が成立すれば「範囲の経済」が存在する。この式のC(x1, x2)がx1、x2を同時に生産、販売するときの  C  )であり、C(x1, 0)が第1製品だけを生産、販売するときの  C  、C(0, x2)が第2製品だけを生産、販売するときの  C  である。

[解答群]
(ア) A:>   B:+   C:総費用
(イ) A:>   B:-   C:平均費用
(ウ) A:<   B:-   C:総費用
(エ) A:>   B:+   C:平均費用
(オ) A:<   B:+   C:総費用

(設問2)
文中の下線部に関する記述として、最も不適切なものはどれか


[解答群]
(ア) 2つの事業がお互いに補い合って1つの物的資源をより完全に利用して生まれる効果は、範囲の経済の効果である。

(イ) 2つの事業がお互いに情報的資源を使い合うと、資源の特質から使用量の限界がなく他の分野で同時多量利用できるため、物的資源を使い合うよりも効率性の高い範囲の経済を生み出せる。

(ウ) 合成繊維企業が蓄積した自らの化学技術を使用し、本業の補完・関連分野の事業に進出するのは範囲の経済の例である。

(エ) 範囲の経済が生まれるのは、基本的には未利用資源の活用が原因であり、企業規模が大きいほど経済効果が良くなることを意味する。

(オ) 範囲の経済は、多角化が進みすぎると新たに進出した事業と企業の保持しているコア・コンピタンスとの関連性が希薄になって生じなくなる。

■解答

(設問1)
 ○  (オ) A:<   B:+   C:総費用

(設問2)
 ×  (エ) 範囲の経済が生まれるのは、基本的には未利用資源の活用が原因であり、企業規模が大きいほど経済効果が良くなることを意味する。

■考察

(設問1)について。

下線まで引いているくらいですので、「範囲の経済」が分からなければ(ピンと来なければ)解答できない問題かな、と思われます。早速「範囲の経済」をGoogleで検索してみました。

企業が製品数を増やしたり、事業を多角化するほど、1製品あたり、1事業あたりのコストが低下するという経営学上の定理。具体的には、1つの企業で複数の製品を生産したり、複数の事業に取り組むときに、そのコストの合計が、同じ複数の製品を別々の企業で生産したり、別々の企業で事業を行っている場合の合計と比べて相対的に低くなる現象を指している。これは同じ設備を利用できたり、管理費などの複数の製品や事業で重複する部分が削減できるためである。この範囲の経済性を追求することが、製品のラインナップを広げたり多角化を志向させる根拠と言われている。しかし、どのような場合も範囲の経済性が大きく働くわけではない。できるだけ重複して利用できる部分を多くし、範囲の経済性が大きくなる製品や事業の組合せが、シナジー効果(相乗効果)が高いと見なすことができる。 
(出典)KOTOBANK

"具体的には、1つの企業で複数の製品を生産したり、複数の事業に取り組むときに、そのコストの合計が、同じ複数の製品を別々の企業で生産したり、別々の企業で事業を行っている場合の合計と比べて相対的に低くなる現象を指している。"

と書かれているので、(設問1)は用語解説がそのまま答えになっています。

用語解説に、本文で使っている生産数量の変数x1とx2、および、同時生産を表す費用関数のC(x1, X2)、個別生産を表す費用関数C(x1, 0)及びC(0, x2)を入れてみたいと思います。

"具体的には、1つの企業で複数の製品を生産したり、複数の事業に取り組むときに、そのコストの合計[C(x1, x2)]が、同じ複数の製品を別々の企業で生産したり、別々の企業で事業を行っている場合の合計[C(x1, 0)+C(0, x2)]と比べて相対的に低くなる[C(x1, x2)]<[C(x1, 0)+C(0, x2)]現象を指している。"

という事のようです。

(設問2)について

相変わらず日本語が難しいです。

(ア)の「物的資源をより完全に利用して生まれる効果」というのは製造装置などでいう「稼働率を上げる」という意味だと思われます。Aの製品だけでは80%しか稼働できないが、Bの製品も受注して生産することで100%稼働にできる=物的資源のより完全な利用と理解しました。

ですから表現は正しいです。

(イ)の情報的資源は何を意味するのでしょうか?例えば顧客情報などでしょうか??情報資源を共有するという意味では、最近ではクラウドサービスのビジネスユースが注目されており、グローバル拠点の生産情報や営業情報などをクラウド上で管理する、といった流れも見受けられます。

クラウドで情報共有するという行為も、グローバルに展開された企業にとって、「範囲の経済」を生かすための手段の一つなのかもしれません。「範囲の経済」以外に、ほかの狙いもあるとは思いますが。

(ウ)くらい日本語が分かりやすいと助かりますね。

(オ)については、コングロマリットという企業体などで発生しているのではないか、と思われます。

コングロマリット (英: conglomerate) は直接の関係を持たない多岐に渡る業種・業務に参入している企業体のこと。複合企業とも。主に異業種企業が相乗効果を期待して合併を繰り返して成立する。
 wikipediaより引用

日本で言うと、京セラ株式会社が株式会社ディーディーアイ(現在はKDDI。KDDI株式会社の合併当初の旧商号。)を設立したのもコングロマリットの例の一つかと思います。

こういった場合は、コア・コンピタンスの関係が希薄であったりするので、範囲の経済は有効にはたらかなかったのではないかと推測しています。

という事は、消去法からも(エ)が最も不適切なのだと思います。

(エ) 範囲の経済が生まれるのは、基本的には未利用資源の活用が原因であり、企業規模が大きいほど経済効果が良くなることを意味する
未利用資源の活用が原因。という点も引っかかりますが、企業規模が大きいほど経済効果が良くなるというのは別問題な気がします。企業規模が大きいと「規模の経済」は働くかもしれませんが、範囲の経済は。。。んーという感じです。企業規模が大きいといろいろな製品ラインなどを持っているでしょうから必然的に範囲の経済が働きやすい環境になるとは思いますが、これとそれとは別問題、な、気がします。

未利用資源の活用という点も、別に、未利用資源だけを原因と特定する必要はない気がします。先ほどの稼働率の話で80%の内20%は未利用といえば未利用ですが、利用している資源だと思われますので。。。

この問題は私の中で、消化不良です。。。未利用資源ってどういったものを指すんでしょうか。

ところで、ここから先は問題の考察とはかけ離れるのですが、第6問で集中戦略の問題を解きました。ポーターによると集中戦略でコスト集中という考えがあり、こちらは逆に多角化による範囲の経済を謳っています。 多角化戦略はアンゾフですかね?

コストについて考えるとき、特定事業に対して、または、市場に対して、「どういった戦略が有効か」、という事を考えなければならないときの難しさを痛感する問題でした。

H23年 企業経営理論 第6問


H23年 企業経営理論 第6問

■問題


中小企業ではニッチ市場に特化したり、特定の市場セグメントに自社の事業領域を絞り込んだりする集中戦略がとられることが多い。そのような集中戦略をとる企業の戦略対応として、最も不適切なものはどれか

(ア) 自社が強みを発揮している市場セグメントに他社が参入してきた場合、自社のコンピタンスをより強力に発揮できるようにビジネスの仕組みを見直す。
(イ) 自社製品の特性を高く評価する顧客層に事業領域を絞り込むことによって、これまでの価格政策を見直し、プレミアム価格を設定して差別化戦略に取り組む。
(ウ) 自社の得意とする市場セグメントに事業領域を絞り込むことによって、業界大手の追随を振り切ることができるばかりか、好業績を長期に維持できる。
(エ) 絞り込みをかけた事業領域の顧客ニーズが、時間の経過とともに、業界全体のニーズと似通ったものにならないように監視するとともに、顧客が評価する独自な製品の提供を怠らないようにする。
(オ) 絞り込んだ事業領域で独自な戦略で業績を回復させることができたが、そのことによって自社技術も狭くなる可能性があるので、新製品の開発やそのための技術開発への投資を強めることを検討する。

■解答

× (ウ) 自社の得意とする市場セグメントに事業領域を絞り込むことによって、業界大手の追随を振り切ることができるばかりか、好業績を長期に維持できる。

■考察

集中戦略という用語について確認したいと思います。
ポーターは3つの基本戦略を示しています。
  1. コスト・リーダーシップ戦略
  2. 差別化戦略
  3. 集中戦略

集中戦略はその一つで、集中戦略はさらに『コスト集中』と『差別化集中』に分けることができます。

ここで、
  • 『コスト・リーダーシップ戦略』と『集中戦略のコスト集中』の違いは何か
  • 『差別化戦略』と『集中戦略差別化集中』の違いは何か

について疑問を持ったのでさらに調べてみたところ、対象となる市場の考え方の違いのようです。
コストを低くする、差別化する、という手段は同じなのかもしれませんが、集中戦略の場合は、特定の市場に特化する『集中する』というのが大前提です。

ですから、

『うちの店はパンとうどんとラーメンを販売してるが、パンに絞って経営するぞ!(特定の市場に集中する事で、例えば、不採算事業を切り離すことでコストを下げたり、今までうどんやラーメンに充てていた研究費をすべてパンに充て、新しいパンを開発するなどで差別化したり、もしくは両方を実現したりする)』というのが集中戦略で、『パンもうどんもラーメンも全部小麦粉だ!大量に仕入れて材料費を安くしつつ、生産量を上げて固定費をさげ(規模の経済)、業界最安値を狙うぞ!大量に作るから、職人さんのスキルもおのずと上がって他社より優位になるだろう!(経験曲線)』というのがコスト・リーダーシップ戦略なのだろうと思います。

差別化戦略の場合も同じような考えで、真似しにくい(模倣困難性)商品をつくったり、ブランドイメージを確立する戦略であると理解しました。例えばですが、差別化戦略の場合、3つの事業をうまく融合して、『うどんラーメンパン』を開発したりするって事だと思います。『うどんとラーメンの汁がパンの中からあふれでるのに、パンがふやけない!』なんていう、物理的に解決困難な無理難題を技術的に解決して達成すれば他社がまねできないので差別化できた、という事になるかと思います。大前提として美味しければ(価値があれば)の話ですけど・・・。
集中戦略で「パン」という市場に集中してしまうと、ラーメンやうどんの味を追求できなくなることからも、上記のような差別化戦略と集中戦略の差別化集中は異なるという理解です。

話がどんどんそれている気がしますので本題に戻ります。

では、(ウ)のどこが不適切なのでしょうか?

集中戦略をとる企業の戦略対応

  • 自社の得意とする市場セグメントに事業領域を絞り込むことによって、業界大手の追随を振り切ることができる
  • 好業績を長期に維持できる

おそらく両方間違えているんだと思います。

まず、事業を集中して大手の追随を振り切るというよりは、大手との争いを避けるほうが近いように思えます。大手に対しては、生産量やシェア、ブランドイメージなどで太刀打ちできないので、少量生産しても利益がでるような事業体制にするために集中するのだろうな、という考えだというのが私の結論です。ですから、差別化同様争いに巻き込まれなくなるための戦略、もしくは、巻き込まれている状態でも影響を少なくする戦略が集中戦略かと思いました。

また、好業績を長期に維持できる、とすれば、差別化戦略に成功したパターンかと思います。ただし、『長期』というのをどのように定義するかにもよりますが、最近の産業の流れを見ていると差別化が実現した(何らかの破壊的なイノベーションを起こした)からと言って長期に好業績を維持できるとは限らないようになってきているように思えます。なんだか模倣の多角化、といいましょうか、単純な模倣ではなく、近年、『差別化された製品から類似する別の差別化製品が生まれている』ような気がします。

集中戦略の場合は「好業績を維持」というより、「安定した収益確保」のほうがまだ近い気がします。

という事で、差別化戦略で好業績を長期に維持できるか否かはおいておいて、(ウ)は不適切であるのだと思います。

2013年2月2日土曜日

H23年 企業経営理論 第5問

H23年 企業経営理論 第5問

■問題

企業の競争優位の源泉に関する記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) 企業と顧客の間で情報の非対称性が大きな製品・サービスでは、通常、ブランド・イメージや企業の評判のような客観的にとらえにくい要因に基づく差別化の重要性が大きい。
(イ) 顧客が支払う意思のある価格の上限が顧客の支払い意欲を示すと考えると、通常、差別化による優位は顧客が自社の製品を競合する製品よりも高く評価しているという強みを持つことを意味する。
(ウ) コスト優位は競合他社よりも低コストを実現できるため、通常、競合他社よりも低価格で製品販売しても利益を確保できる強みを意味する。
(エ) コスト優位を確立した企業は、競合他社よりも常に製品1単位当たりのコストとそのコストの総額が低いため、低価格で製品・サービスを販売できる。
(オ) どのような差別化による優位をつくるかを考える際には、通常、環境の変化だけではなく自社の強みと顧客の範囲をどのようにとらえて定義するかが重要である。

■解答

× (エ) コスト優位を確立した企業は、競合他社よりも常に製品1単位当たりのコストとそのコストの総額が低いため、低価格で製品・サービスを販売できる。

■考察

まず、この問題で分からなかった用語として、「情報の非対称性」について調べてみました。

情報の非対称性
取引を行う際、商品等に関して当事者がもっている情報に当事者間で格差があること。 例えば、新品の商品が取引される場合、品質や性能がカタログ等によって示されており、価格を決定する情報は、売り手と買い手との間で「対称」であるといえる。それに対し、中古品の場合は、個体ごとに使用年数、摩耗や損傷の有無・程度などの情報が異なるため、価格を決定する品質情報に関して、売り手と買い手との間に「非対称性」が生じるといえる。 後者の場合、買い手は価値の低い中古品を、そうとは知らずに高い価格で買ってしまうおそれがある。しかし、後になって自分が損な取引をしたことに買い手が気づき、他の買い手も購入に対して慎重になると、中古品が売れなくなる可能性が出てくる。そこで売り手は、情報公開や何らかの品質保証を求められることになる。 このように、市場に情報の非対称性が存在する場合、その市場ではさまざまな問題が生ずる。逆選択やモラル・ハザードなどはその代表例とされている。
kotobankより引用

上記の解説には「中古車市場」が例に上がっています。他にもないか、いろいろ考えを巡らせてみましたが、飲食産業もそうかもしれないです。"食材のスペック値"がメニューに書かれていて、「今日は料理人のスペック5の食材スペック5の料理を食べよう!」と、いうような食事選びの経験は、少なくとも私はないです。

モラル・ハザードや情報の非対称性というキーワードに対してのコラムも掲載します。

(出典)PRESIDENT


「この店は有名だから美味しいに違いない」、「この店はランキング1位だから美味しいに違いない」などブランドイメージや評判でお店を選んだりしたことが、私個人は度々あるため、

通常、ブランド・イメージや企業の評判のような客観的にとらえにくい要因に基づく差別化の重要性が大きい。

が、まさにその通り、という事だと思います。 ですから(ア)は記述として適切だと思います。



では、(エ)がなぜ不適切なのか、について考えてみたいと思います



おそらくは「常に」という単語が致命的な間違いなのだと思います。 

とりあえずはシミュレーションでもして理解を深めてみたいと思います。仮想のA社、B社固定費、変動費を設定して比較してます。A社は大企業であり、B社はA社ほど大きくなく、唯一のライバル企業だと仮定しています。市場はこの2社によって占有されているとします



変動費については大量に材料の購入数量が多くなるにつれ、コストが減ると仮定しています。A社は大企業なので材料も安く仕入れることができるし、大きな工場を持っているため50万台を超える大量生産が可能です。大きな工場を持っているので固定費はB社に比べて高いです。

B社はA社に比べ小さな企業で材料を買うのもA社ほど値引きしてもらえませんまた、設備台数も少なく最大50万台までしか生産ができません。

市場が100万台需要のある市場だった場合で、A社のシェアが50%以上あればB社に比べてコスト優位性があるといえると思いますが、常に
  • 製品1単位当たりのコスト 
  • そのコストの総額
が優位であるといえるでしょうか。やはり「常に」は言い過ぎなんだと思います。市場が50万台の市場にまで落ちたり、第三者が参入してA社のシェアが減った時にはコスト優位性は損なわれます。

以上から、 (エ)は最も不適切である、と言えると思います。

2013年1月29日火曜日

H23年 企業経営理論 第4問

H23年 企業経営理論 第4問

■問題

企業は環境の競争要因を分析して適切な戦略行動をとろうとする。その際の環境分析について考慮すべき点の記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) コストに占める固定費の比率が高い製品の場合、企業は生産能力を最大限に活用しようとしがちであるため、業界は過剰生産に陥りやすいので、できるだけすばやくその製品を売り抜けて、業界からの撤退を図ることが重要になる。

(イ) 自社が必要とする部材の供給企業が減少すると、競合企業との競争のため調達価格がつりあがりやすいので、代替的な部材の調達や自社開発を検討することも視野に入れておくことが重要になる。

(ウ) 自社の製品やサービスと補完性のあるものを販売する企業と強いアライアンスがあると、顧客の望む価値を統合的に提供して競合他社にない競争優位を構築し得るので、このようなアライアンス相手を見出すことは重要になる。

(エ) 新規参入企業がもたらす追加的な生産能力は、消費者の購入コストの上昇を抑え、競合企業には売上の減少や収益性の低下をもたらすので、参入障壁の強固さや参入企業への業界の反撃能力を点検することが重要である。

(オ) 製品がコモディティ化すると、顧客のスイッチングコストが低下して、競合企業との価格競争が激化するので、差別化を目指すには一歩先んじた独自製品の開発とその販売を目指すことが重要である。

■解答

×  (ア) コストに占める固定費の比率が高い製品の場合、企業は生産能力を最大限に活用しようとしがちであるため、業界は過剰生産に陥りやすいので、できるだけすばやくその製品を売り抜けて、業界からの撤退を図ることが重要になる。

■考察

コストに占める固定費の比率が高い製品の場合、
  1. 企業は生産能力を最大限に活用しようとしがちであるため
  2. 業界は過剰生産に陥りやすい
ここまでは正しいと思います。


例えば製造業における生産工程を例に挙げると、『生産能力を最大限に活用』 = 『生産設備の稼働率を最大限に活用する』ことにあたるため、稼働率あげることに注力しすぎると、受注を超える生産を行ってしまった場合に過剰生産となり、在庫を抱える原因や、飽和による価格下落を招く恐れがあると考えています。

では、なぜ稼働率にこだわる必要があるのかについも調査して考察してみたいと思います。
固定費とは(外部サイト:ハピラボ)
5. 固定費って何?(外部サイト:決算書.com)
固定費を一言でいうと

固定費=売り上げの増減に左右されない人件費+経費のこと
ということであると理解できます。

(出典)日経BP社

には、損益分岐点の概念図が掲載されています。

固定費の比率が高い製品であればあるほど、売り上げが必要であることが分かります。売り上げが必要であるということは、なるべく多くの生産、すなわち、稼働率を上げる必要がある、ということになります。このような背景から固定費が高い製品→稼働率を高くしたい→過剰生産という流れになりがちでるということであると理解しました。

では、このような構図を持つ製品を持っている場合、「できるだけすばやくその製品を売り抜けて、業界からの撤退を図ることが重要になる。」ことが正しいのでしょうか?

極端な話ですが、その製品の固定費が高いとしても、シェアが100%で市場も広く、非常に競争優位性がある製品の場合は上記の限りではないと思います。固定費が高くても利益が出ていれば素早く売り抜けて撤退を図る必要はないと私は考えます。ですから(ア)は適切ではないのだと思います。

2013年1月28日月曜日

初期の点数(全く勉強せずに模擬テストに臨んだ結果)

平成23年度過去問題結果
 
A.経済学・経済政策   ・・・ 20点 E
B.財務会計       ・・・ 16点 E
C.企業経営理論     ・・・ 28点 E
D.運営管理       ・・・ 44点 D
E.経営法務       ・・・ 52点 C
F.経営情報システム   ・・・ 56点 C
G.中小企業経営・政策  ・・・ 31点 D


自分なりにランクをつけてみてます。
0  ~ 30点 Eランク
31 ~ 50点 Dランク
51 ~ 60点 Cランク
61 ~ 80点 Bランク
81 ~     Aランク

とりあえずはH23の問題をすべてブログ上で回答してからH23年を再度テストして間違えたところを再復習して、H22年のテストをして・・・を繰り返そうと思います。

2013年1月27日日曜日

H23年 企業経営理論 第3問

H23年 企業経営理論 第3問

■問題

企業の強みと弱みに関する分析フレームワークについての記述として、最も不適切なものはどれか。

(ア) 経営資源の模倣には直接的な複製だけではなく、競争優位にある企業が保有する経営資源を別の経営資源で代替することによる模倣もある。

(イ) 経営資源やケイパビリティが競争優位を生じさせており、企業の内部者にとって競争優位の源泉との関係が理解できない場合、経路依存性による模倣困難が生じている。

(ウ) 経営資源やケイパビリティに経済価値があり、他の競合企業や潜在的な競合企業が保持していないものである場合、希少性に基づく競争優位の源泉となりうる。

(エ) 経済価値のない経営資源やケイパビリティしか保持していない企業は、経済価値を有するものを新たに獲得するか、これまで有してきた強みをまったく新しい方法で活用し直すかの選択を迫られる。

(オ) 成功している企業の経営資源を競合企業が模倣する場合にコスト上の不利を被るのであれば、少なくともある一定期間の持続的な競争優位が得られる。

■回答

× (イ) 経営資源やケイパビリティが競争優位を生じさせており、企業の内部者にとって競争優位の源泉との関係が理解できない場合、経路依存性による模倣困難が生じている。

■考察

私にとって、まず、日本語としてなにやら異常に難しい書き方がされているように思えるのですが・・・マルかバツかさておき、根本的に何が言いたいのかが分からなかったです・・・。とりあえず、紐解いて解釈していきたいと思います。

まずは、私なりに用語を確認していきたいと思います。

経営資源の一般的な定義としては、ヒト・モノ・カネ・情報の4つを指します。
ヒト・モノ・カネ・情報というのも割とざっくりしているのでもう少し調べてみました。 

経営学者ジェイ・B・バーニー氏によると、経営資源の企業属性は
  ①財務資本:金銭的資源
  ②物的資本:物理的技術,設備,立地,原材料へのアクセス等
  ③人的資本:従業員が保有する経験,判断,知性,洞察力,人間関係
  ④組織資本:組織構造,公式,非公式の計画,管理,調整のシステム,外部の他企業などとの関係等

としているとのことですが、詳しくは『企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続』という本に記載されているようです。私の場合一度こういった文献を読まないとだめなのかもしれません。

ケイパビリティーについても、これも用語は違えど結局のところ経営資源の一つの形だと思います。ここでは組織能力と訳してもいいかと思います。


「ケイパビリティー」(capability)とは、企業が全体としてもつ組織的な能力、あるいはその企業に固有の組織的な強みのことです。経営戦略を構成する重要な概念であり、競争優位の大きな源泉となりえます。戦略そのものによる差別化が困難な状況下においては、オペレーションの主眼となるスピードや効率性、高品質といった企業のケイパビリティーを活かし、戦略の実現性や遂行能力で他社に差をつけることが持続的な優位性の確立につながります。企業に固有のケイパビリティーを最大限活用した競争戦略を「ケイパビリティー・ベースド・ストラテジー」といいます。(2012/6/25掲載)



競争優位の源泉についていろいろ調べてはみているのですが・・・詳細をまとめるのは難しそうですね。中小企業診断士のテキストは購入しましたが、テキストのみでこの分野の理解に至るまでは困難な、というか不可能な気がします。

この第3問でいうところの競争優位の源泉の一つとしては、コア・コンピタンスがあげられると思いますし、理解が進みやすそうなのでひとまずは競争優位の源泉に"例えばコア・コンピタンス"という言葉を代入してみようと思います。

コア・コンピタンス(Core competence)とは、ある企業の活動分野において「競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力」「競合他社に真似できない核となる能力」の事を指す。
wikipediaより引用

経路依存性による模倣困難という用語についてはひとまず、"企業文化や歴史などの弊害に伴ってマネすることが難しい。"と代入してみますと、

経営資源(金銭や物理的技術など)や組織能力、それらリソースが競争優位性を生む。
従業員が競争優位性の源泉(たとえばコア・コンピタンス)とリソースの関係を理解できない場合、企業文化や歴史などの弊害に伴ってマネすることが難しい状況が発生している。

ここまで崩して思ったのが、おそらく、内部者を外部者に変えれば意味が通る気がしてきました。

おそらく、競争優位性の源泉がどのように形成されているか外部者が分析できないとき、その時は、経路依存性が発生している状況になっていると考えられるため、模倣することが不可能です。 それら競争優位性の源泉も含めて経営資源なわけですから、ケイパビリティも含めて経営資源が競争優位性を生んでいるんです。ということが言いたいのだろうと理解することにしました。

上記文面であれば概ねその通りだと思うので、適切ではないなと思われる個所としては「企業の内部者」という記述だと思います。

あと、個人的にわからなかった点として

(ア) 経営資源の模倣には直接的な複製だけではなく、競争優位にある企業が保有する経営資源を別の経営資源で代替することによる模倣もある。

がイマイチどういうケースなのかピンとこなかったのですが、この記事をまとめていて気が付きました。

例えばですが、最近の話では、アメリカのアップル社のiPhoneは経路依存性による模倣困難性があった(競争優位な状態で競争優位の源泉がiOS=コア・コンピタンス)ケースであると思われますが、別の資産の代替での模倣(この場合マネと言ってしまっては両社に対してけんが立ってしまいますので同一の製品ラインを指して言ってます)としてSAMSUNG社はOSをAndroidにしたギャラクシーで攻勢をかけた。というのがいい例だと思いました。

iOSには他社にはまねできない歴史があります。しかしながら機能や動作ではGoogle社のAndroidはスマートフォンという市場に対しての参入を果たすことができました。Androidがでることによって、OSの自社開発にかかるコストを下げることができたため、経営資源の代替でのSAMSUNG社も模倣が可能になったのだと考察します。故に(ア)の表現は適切なんでしょうね。

H23年 企業経営理論 第2問

H23年 企業経営理論 第2問

■問題


 次のM&Aに関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 わが国では以前は欧米に比べてM&Aが盛んに取り組まれたとは言い難かった。
むしろわが国企業では、①M&Aよりも内部成長方式による多角化を用いることが多かった。
 しかし、近年わが国の企業のM&Aは国内のみならず海外でも活発化している。
そればかりか、それとは逆に海外企業によるわが国企業のM&Aも多く見られるようになった。
 M&Aの方式は多様であり、どのようなM&Aに取り組むかは、その目的や企業の戦略によって異なってくる。また、企業の業績に貢献するM&Aであるためには、②M&Aに関する経営上の課題に対処することが重要である。

 

(設問1)


 文中の下線部①について、多角化とM&Aに関する特徴や問題点の記述として、最も不適切なものはどれか。

(ア) 開発された技術をてこに新規事業が増えるにつれて、社内でシナジー効果を追究する機会が高まるが、シナジー効果が成長にうまく結び付かない場合、多角化を維持するための費用がかさんだり、多様な事業をマネジメントするコストが大きくなるという問題がある。


(イ) グリーンメーラー的な投機的な投資家や企業価値の実現による配当を迫る投資ファンドの動きが活発になると、企業はそれらに狙われないように企業防衛の姿勢を強めようとするため、M&Aも少なくなりがちである。

(ウ) 成長の牽引力となる技術が枯渇してくると、新規な技術による事業機会も少なくなりがちであり、技術イノベーションによる多角化戦略は困難になる。

(エ) 長期雇用慣行等に支えられて従業員のみならず経営者も会社への一体感が強くなると、このような企業がM&Aの対象になった場合、お家の一大事と受け止められ、会社ぐるみでM&Aに抵抗する動きが生じやすい。

(オ) 貿易摩擦等の外圧に押されて企業の海外進出が活発になると、国内での生産技術開発や新製品開発が回避され、内部成長方式による多角化戦略は機能しなくなる。

(設問2)


 文中の下線部②で指摘されているようなM&Aが成功するために注意すべき経営上の課題についての記述として、最も不適切なものはどれか。

(ア) M&Aで企業規模が大きくなれば、獲得した規模の経済性や市場支配力の便益を上回る管理コストが発生する可能性が高まるので、管理コストの削減を図るとともに、そのことによって経営の柔軟性が失われないように注意する必要がある。

(イ) 企業間のベクトルを合わせて統合するには、それぞれの企業で培われてきた企業文化の衝突を避け、互いを尊重しつつ、1つの企業体に融合することを図ることが重要になる。

(ウ) 買収先の企業の主要なスタッフの離職が多くなると、マネジメント能力や専門的な知識や技能などの人的資源が損なわれて組織能力が弱くなるので、買収先の企業の従業員の賃金や待遇を手厚くすることを怠らないようにすることが必要である。

(エ) 買収戦略にのめりこむと、買収先企業を適切に評価することがおろそかになり、高いプレミアム価格を相手に支払ったり、高いコストの借り入れや格付けの低い社債の過度な発行などが起こりやすく、大きな負債が経営危機を招きやすくなることに注意が必要である。

(オ) 買収によって新規事業分野をすばやく手に入れることは、イノベーションによる内部成長方式の代替であるので、M&Aの成功が積み重なるにつれて、研究開発予算の削減や内部開発努力の軽視の傾向が強まり、イノベーション能力が劣化しやすくなることに注意が必要である。

■回答

 

(設問1) ×オ


貿易摩擦等の外圧に押されて企業の海外進出が活発になると、国内での生産技術開発や新製品開発が回避され、内部成長方式による多角化戦略は機能しなくなる。

 

(設問2) ×ウ


買収先の企業の主要なスタッフの離職が多くなると、マネジメント能力や専門的な知識や技能などの人的資源が損なわれて組織能力が弱くなるので、買収先の企業の従業員の賃金や待遇を手厚くすることを怠らないようにすることが必要である。


■考察


設問1の回答にある「イ」に出てくるグリーンメーラーという言葉を知らなかったので早速Googleで調べてみました。

グリーンメーラー(greenmailer)とは、保有した株式の影響力をもとに、その発行会社や関係者に対して高値での引取りを要求する者をいう。ドル紙幣の色であると、脅迫状を意味するブラックメールを合わせた造語である。蔑称として用いられることが多い。当該行為はグリーンメール(greenmail)という。

概説

グリーンメールは、仕手の一種として、狙いを定めた企業株式を多数保有した後、その株式の議決権行使において、経営者に圧力をかけたり、当該株式を経営陣が好ましいと感じない他者に転売することを選択肢として提示したりすることにより、企業を「脅迫」し、保有株式を高値で買い取らせて大きな利益をあげる方法論である。
なお、いわゆる濫用的買収者は、グリーンメーラーに限られないものとされる。

wikipediaより引用

グリーンメーラーに関するやり取りが記された記事も参考に掲載します。

第11話 敵対的買収を飼い慣らす社会を目指して 2011年4月21日(木)
(出典)日経BP社

上記サイトに記載されている小糸事件を例にみると

  • 小糸製作所は世界最大の自動車照明器メーカーであり、トヨタ自動車をはじめとする大手自動車メーカー各社が用いる自動車照明器を製造している。
  • 1989 年3月末、米国の投資家T. Boone. Pickens氏はこの小糸製作所の株式約20%を取得したことを発表し、同社の経営に参画したい旨を宣言した。
という流れがあったようです。

トヨタ自動車株式会社の株を20%保有(13/01/25時点の時価総額が約15兆円なので、時価総額の20%は3兆円)するとなるとかなり厳しいですが(株)小糸製作所の時価総額は2,200億円。時価総額の20%は440億円になります。

理解が正しいかどうか自信がありませんが、要するに、M&Aを活発に行うことで、時価総額の少ない会社を手に入れると同時に、狙われやすい対象が増える可能性が高くなる「かもしれない」ということで "企業はそれらに狙われないように企業防衛の姿勢を強めようとするため、M&Aも少なくなりがちである。" と表現されているのだと思われます。ですからこれは正しいということになります。("少なくなる"、と断定されるのではなく、(傾向として)"少なくなりがち"になるんでしょうね、おそらく。)



では、設問1のオについて考察していきたいと思います。

貿易摩擦等の外圧に押されて企業の海外進出が活発になると、国内での生産技術開発や新製品開発が回避され、内部成長方式による多角化戦略は機能しなくなる。
 たとえば、日米の貿易摩擦について考えてみたいと思います。「日本の自動車が安すぎて困るよ!(当時は1$240円と円が安かったので日本車が安かったらしいです)」とアメリカから言われ(貿易摩擦の発生)、アメリカでは日本車の不買運動が起こりました。1985年にはプラザ合意で円とドルの為替是正、要するに円高誘導が実施されて日本の輸出が不利になるような環境になりました。

この際、輸出が不利になったため、"貿易摩擦等の外圧に押されて企業の海外進出が活発になり" 93年には現地生産台数が輸出台数を超えたらしいです。

ですから1文目は正しい表現だと思われます。

では、

  • 国内での生産技術開発や新製品開発が回避され
  • 内部成長方式による多角化戦略は機能しなくなる
は、どうでしょうか。

製品-市場マトリックス(アンゾフの成長ベクトル)で見ると、今回は生産拠点が国内から海外に移っているという状況ですから、戦略にもよりますが、国内での生産技術開発や新製品開発は海外にシフト(回避)される可能性はあるかもしれませんが、回避されることにより多角化戦略が機能しなくなるという事態に陥ることは考えづらいと考えています。

私の考えとして、もし誤りを正しくするのであれば
  • 貿易摩擦等の外圧に押されて企業の海外進出が活発になり
  • 国内での生産技術開発や新製品開発が回避される。
  • 内部成長方式による多角化戦略は機能しない
という感じかなぁと思ってますので、「オ」は多角化の特徴としては説明できていないように思えます。


続いて、設問2のウについて考察です。

ウ 買収先の企業の主要なスタッフの離職が多くなると、マネジメント能力や専門的な知識や技能などの人的資源が損なわれて組織能力が弱くなるので、買収先の企業の従業員の賃金や待遇を手厚くすることを怠らないようにすることが必要である。
私の想像の域を超えないので一度調べないといけないのですが、通常企業買収をした場合に、従業員はいったん元の組織から退職し、新たに買収元の企業に再就職するものだと思っています。

となると、おそらくは再度就職面接のようなものがあり、そこで賃金の交渉が行われる(実際には指値だと思うのですが)と思ってますから、いったん買収元の企業に転職してしまったあとは従業員の賃金や待遇は買収元のルールに従って行われるだけで特に優遇はしないはず、ゆえに「ウ」は不適切なのだと思います。
 

H23年 企業経営理論 第1問

H23年 企業経営理論 第1問

■問題


ドメインは全社レベルと事業レベルに分けて考えられるが、ドメインの定義ならびに再定義に関する記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) D.エーベル(Abell)の「顧客層」「顧客機能」「技術」という3次元による事業ドメインの定義では、各次元の「広がり」と「差別化」によってドメインの再定義の選択ができる。

(イ) 事業ドメインは将来の事業展開をにらんだ研究開発分野のように、企業の活動の成果が外部からは見えず、潜在的な状態にとどまっている範囲も指す。

(ウ) 自社の製品ラインの範囲で示すような事業ドメインの物理的定義では、事業領域や範囲が狭くなってT.レビット(Levitt)のいう「近視眼的」な定義に陥ってしまうことがしばしば起こる。

(エ) 全社ドメインの定義によって企業の基本的な性格を確立できるが、製品やサービスで競争者と競う範囲は特定できない。

(オ) 単一事業を営む場合には製品ラインの広狭にかかわらず事業レベルの定義がそのまま全社レベルの定義となるが、企業環境が変化するためにドメインも一定不変ではない。

■回答

 ×  エ 全社ドメインの定義によって企業の基本的な性格を確立できるが、製品やサー
      ビスで競争者と競う範囲は特定できない。
 

■考察



ここでいうドメインは事業領域の事で、Googleでドメインと検索するとドメイン名の説明ばかり出てきます。なので、続いてGoogleで事業領域で検索してみると、2013/01/27現在パナソニック株式会社の事業領域が一番最初に出てきました。


ここで参考にパナソニック株式会社の事業領域を見てみると

パナソニックグループは、パナソニック株式会社及び連結子会社633社(2011年3月31日)を中心に構成され、総合エレクトロニクスメーカーとして関連する事業分野について国内外のグループ各社との緊密な連携のもとに、生産・販売・サービス活動を展開しています。
パナソニック株式会社のホームページより引用

となっています。

goo辞書によると
domain
企業が定めた自社の競争する領域・フィールドのこと。事業ドメインともいう。
企業はドメイン(事業ドメイン)の設定により、戦う領域を設定し、組織活動の指針とする。ドメインは、企業の方向性を示す上で、非常に重要な 意味を持つ。 例えば、ある鉄道会社がドメインを「鉄道事業」と定義した場合と「総合輸送事業」と定義した場合とでは、おのずと環境変化に対応する発想が変わってくる。 「鉄道事業」と定義した場合は、輸送手段の進歩あるいは他の輸送手段との競合に対し、鉄道という枠の中でのみ差別化して優位に立つことを模索する。 一方、「総合輸送事業」と定義した場合は、経営環境の変化に対し、鉄道以外の輸送手段にも参入することにより競争優位を確立することを考える。つまり、他 の輸送手段との競合を常に視野に入れた戦略を立てることになる。 ドメインを掲げることによって経営資源をフォーカスさせ、継続的に見ても経営資源を一貫して蓄積でき、組織全体として戦う方向性を定めることができる。 一方、ドメインを予め限定しないまま、多角化や買収を行って多様な事業分野に進出する企業もある。そういう状況においては、事業機会の拡大とともにドメイ ンは次第に拡大する傾向にある。
「またドメインは、事業ドメイン,事業領域とも言う」
 goo辞書 「ドメイン」の意味より引用

この問題で「エ」が「最も不適切なもの」とされる理由は

『製品やサービスで競争者と競う範囲は特定できない』 と書かれているからだと思います。

パナソニック株式会社の事業領域を見ても

総合エレクトロニクスメーカーとして関連する事業分野について国内外のグループ各社との緊密な連携のもとに、生産・販売・サービス活動を展開しています。

と書かれていますし、goo辞書に至っては

戦う領域を設定し、組織活動の指針とする。

と記述、されていることからも『競う範囲は特定できない』のは記述として誤っていると思います。

ただ、『全社ドメインの定義によって企業の基本的な性格を確立できる』と書いていますが、ここでいう性格というのはどう定義されているのでしょうか。。。私個人としてはこの文面もちょっとグレーな文章だなと思いました。

ちなみに性格の意味もgoo辞書で調べてみました。

行動のしかたに現れる、その人に固有の感情・意志の傾向。「ほがらかな―」「夫婦  の―が合わない」
特定の事物にきわだってみられる傾向。「二つの問題は―が異なる」「趣味的―の   濃い団体」
goo辞書より引用

仮にこの問題が、『全社ドメインの定義によって企業の基本的な性格を確立できる』で終わっていた場合は正解は「マル」なんですかねぇ。。。たぶん「マル」でいいんだろうけど微妙にしっくりこないです。

はじめまして

自己紹介とブログの趣旨


みなさん初めまして。岩川光善(いわかわみつよし)と申します。

このブログ趣旨としては

 (1)中小企業診断士の資格取得に向けての個人的な備忘録

 (2)中小企業診断士の資格取得に向けての情報交換

を目的に更新していこうと思います。学習は土日祝がメインなので更新は週1回程度になる見込みです。

足元では平成25年度の試験合格を目標にしており、現在は国内電機の製造メーカーに勤めているのですが、国内製造における問題課題などをロジカルに分析し、今後の戦略を提案できる・もしくは推進できる人材になることをゴールにしようと思っています。

学習の進め方としては、当面、インターネットから過去問題集をダウンロードして過去問題を解いていこうと思います。基本的に私は資格試験を行う際には過去問題集ばかり解くことにしています。同じものを何回も解いてなるべく理解を深めるようにするのが私なりの進め方です。

実は昨年一度無勉強で過去問を一通り解いています。また、初回テスト結果も公開させてもらいたいと思います。確か平均25点~30点くらいだったはずです(ノ´∀`*)

点数が低いということはそれだけ伸びしろがあるということ、伸びしろがあるということはそれだけ成長できるといこと!と割り切って頑張ります(笑)


実名記事について



これまでインターネットにおけるコミュニケーションは匿名が当たり前でしたが、Facebookの爆発的なサービス拡大をきっかけとして実名での利用が着々と広がってきています。

私の場合、芸能人や政治家など、特に自分をアピールしなければならない職業についているわけでもなく、また、今後著名人になることを目標としているわけでもないため、「個人が実名を明かしてブログを更新していく」ことに対して特に大きなメリットを見つけられてはいないのですが(というよりも2013年1月現在はリスクの方が大きい気がするので、デメリットの方が多いかもしれませんね)、なんとなくプロフィールをGoogle+のプロフィール(要するに実名)そのままに投稿していきたいと思いこのブログを更新していきます。

では、なぜ実名でブログを更新するのか、について記述しておこうと思います。

  1. まず、私という実態が少しでもリアリティあるものに見えれば良いなと考えています。

    学習を始めたばかりなのでそもそもH.25の試験に合格できるか否か、定かではありませんが、私と同様に中小企業診断士の資格取得を目標とされている(そこがゴールではないにしても)方に対して、もしくは自身に対して、何らかの一助になればと考えています。

    インターネットの情報には、商業と申しますか、アフィリエイトなどの金銭的な目的で記事を書いている方もいらっしゃるのではないかと推測しています。使える情報、使えない情報がうまく選別できればいいのですが、なかなか難しいものですので、インターネット上では焼け石に水な気もしますが、実名で書いてみようと思いました。

     
  2. 記事にある種の責任を持てたらと考えています。

    匿名でも責任ある記事を書けばいいだけの話なのですが・・・。会社に行く際にスーツを着るように、身なりをただせばおのずと記事の質もあがるかなぁと、感覚的に思っています。

    あまり根気がよい方ではないので正直資格取得の学習も途中で投げ出しかねません。

    ブログを通じて情報発信することで自身の「戒め」になることを期待しています。


おわりに


中小企業診断士の資格は最短で今年中にけりがつくかもしれないのにブログを立ち上げておりますが、トントン拍子に事がうまく運んだ際には、その時に先のことを考えようと思います。
要するに、今年受かるとは思っていません(笑)

すでに合格されている方、今同じように試験勉強に励んでいる方、勉強法のご教授やアドバイス、答えられないものがほとんどだと思いますが質問などコメント頂けると幸いです。

また、反対意見なども歓迎します。(ただ、シネ、とか、バカとかただの誹謗中傷はやめてくださいね。 あくまでも意見でお願いします。)