2013年3月3日日曜日

H23年 企業経営理論 第10問

H23年 企業経営理論 第10問

■問題

ベンチャー企業と大学や研究機関が連携を図り、イノベーションに取り組む動きが多く見られるようになった。そのような状況や提携に際して考慮するべき問題点についての記述として最も適切なものはどれか。

(ア) オープン・イノベーションを推進するために、大学とベンチャー企業が連携して、大学から独立した研究機関を設ける試みが行われているが、ベンチャー企業の資金力が弱いので、そのような研究機関から技術イノベーションが生まれることはほとんど見られない。

(イ) 行政による産業クラスター等の技術支援施策を受けて、わが国では大学や研究機関の技術の民間への移転が活発であり、その結果株式公開に至るベンチャー企業が多く生まれている。

(ウ) 国立大学法人が他機関との技術連携をする場合、知財本部やTLOを通じることが義務づけられているため、技術提携コストや調整の負担がかさむことになるが、そのことがベンチャー企業の国立大学との連携を難しくしている。

(エ) 大学発ベンチャーが大学や研究機関と連携しながら、自前の技術を進化させたり、不足する技術力を補うことが行われているが、事業として発展するには企業者能力が重要になる。

(オ) 米国に比べてわが国では大学発ベンチャーはあまり成功していないが、その理由として技術開発者の大学教員が経営に直接関与することが禁じられていることを指摘できる。

■解答

(エ) 大学発ベンチャーが大学や研究機関と連携しながら、自前の技術を進化させたり、不足する技術力を補うことが行われているが、事業として発展するには企業者能力が重要になる。

■考察

(ア) そのような研究機関から技術イノベーションが生まれることはほとんど見られない。という一文が誤りだと思い、『大学とベンチャー企業が連携して、大学から独立した研究機関が生んだ技術イノベーションの事例』を探そうとしてみましたが、わかりやすい事例を探し当てることができませんでした。おそらくiPS細胞関連やナノテクノロジー関連における事例があると思われるのですが・・・。もしどなたかわかりやすい事例をご存知の方がいらっしゃれば是非紹介して頂きたいです。

(イ) その結果株式公開に至るベンチャー企業が多く生まれている。上記(ア)でイノベーションが生まれるという事が正解である、と記載しましたが、『技術イノベーションが生まれているが、その結果株式公開している企業が多く生まれているか?』と問われると"NO"になるのだと思います。そのため、事例を探し当てることが難しい要因になっているのだと思います。

(ウ)については個別に用語から確認していきたいと思います。
国立大学法人が他機関との技術連携をする場合、知財本部TLOを通じることが義務づけられているか?技術提携コストや調整の負担がかさむことになるか?





知的財産戦略本部

知的財産戦略本部(ちてきざいさんせんりゃくほんぶ)は、知的財産基本法第24条の規定に基づき、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため、2003年5月に内閣に設置された機関。知的財産推進計画の作成及び実施の推進を主要な業務としている。長である知的財産戦略本部長は内閣総理大臣が務める。実体的には、知的財産戦略会議の役割を引き継ぐ機関であると考えられる。
また、政府の知的財産戦略本部にならい、各地域及び農林水産省にも同名の機関が設けられている。大学においても、同名の機関を設けた例がある。
wikipediaの知的財産戦略本部より引用

技術移転機関(TLO)

技術移転機関(ぎじゅついてんきかん、英: Technology Licensing Organization,TLO)は「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(大学等技術移転促進法、TLO法(経済産業省と文部科学省の所管。1998年に制定・施行。))に基づき事業計画が承認・認定された技術移転事業者を指す。大学の研究者の研究成果である発明(特許)を民間企業等へ技術移転(Technology Licensing)することを主要業務とし、産学連携の仲介役・中核の役割を果たす。
wikipediaの技術移転機関より引用

知的財産戦略本部は”知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため、2003年5月に内閣に設置された機関”ですしTLOは”産学連携の仲介役・中核の役割を果たす”ための事業者であることからも義務付けられているかどうかまで調べれませんでしたが、コストや負担の増加が発生しているのであれば本末転倒な組織・事業者という事になってしまいます。故に”NO”だと思われます。

結果、ベンチャー企業の国立大学との連携を難しくしているか?については連携の負担を軽減している、が、正解だと思います。

(オ) 技術開発者の大学教員が経営に直接関与することが禁じられているかについて調べたところリサーチアドミニストレータという用語を見つけました。

リサーチ・アドミニストレーター

リサーチ・アドミニストレーター(Research Administrator)とは、企業や大学、研究所などの高等教育研究機関において、研究面から経営・運営に直接的に関与する上級管理職、役員級職のことである。トップダウンの支配命令型リーダーではなく、調整管理型リーダーであるサーバント・リーダーとしての役割を担う役職である。

株式会社などの企業で言えば執行役員級の管理職であり、上級(シニア)職は取締役級の職位(例えば、最高技術責任者(CTO))である。現在、リサーチ・アドミニストレーターの一般的な日本語訳は存在せず、企業では、RA(Research Administrator)、大学や研究所などの高等教育研究機関では、URA(University Research Administrator)と呼ばれることが多い。本項においては、RA、URAとして記載する。
wikipediaのリサーチ・アドミニストレータより引用

wikipediaによると、この役割については北海道大学や岡山大学における運用実績があるようです。ですから禁じられていないという事になるかと思います。

しかしながら実際問題、米国に比べてわが国では大学発ベンチャーはあまり成功していないようです。この点については一度なぜ成功していないのか、現在の国内における法律なども含めて今後学習してみたいと思います。

■ご参考

知的財産基本法

知的財産基本法(ちてきざいさんきほんほう、平成14年12月4日法律第122号)は、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を推進することを目的とし、そのために行うべき施策について定めた日本の法律である。2002年12月4日に公布され、2003年3月1日に施行された。

主要な規定

  • 「知的財産」及び「知的財産権」を定義(第2条)
  • 知的財産の取り扱いに関する国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明確化(第5~8条)
  • 基本的施策
    • 研究開発の推進(第12条)
    • 研究成果の移転の促進(第13条)
    • 権利の付与の迅速化(第14条)
    • 訴訟手続の充実及び迅速化等(第15条)
    • 権利侵害への措置の強化(第16条)
    • 国際的な制度の構築(第17条)
    • 新分野における知的財産の保護(第18条)
    • 知的財産を活用する環境の整備(第19条)
    • 情報の提供(第20条)
    • 教育の振興(第21条)
    • 人材の確保(第22条)
  • 「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」(知的財産推進計画)の作成(第23条)
  • 知的財産戦略本部の設置(第24条)
wikipediaの知的財産基本法より引用

0 件のコメント:

コメントを投稿