2013年2月3日日曜日

H23年 企業経営理論 第7問


H23年 企業経営理論 第7問

■問題

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

単一の事業を営む企業が多角化によって事業構造を変革し、持続的な成長を実現する行動は、「範囲の経済」の視点から説明できる。「範囲の経済」が存在すれば、企業が複数の事業を展開することによって。それぞれの事業を独立に営むときよりも、より経済的な事業運営が可能になる。

(設問1)
文中の下線部に関する以下の文章の空欄A~Cにあてはまるものの最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。

2つの製品の生産量をそれぞれ x1、x2で表し、その費用関数をC(x1, x2)で表したとき、「範囲の経済」の関係は以下のように示すことができる。

C(x1, x2)   A   C(x1, 0)   B   C(0, x2)

この関係が成立すれば「範囲の経済」が存在する。この式のC(x1, x2)がx1、x2を同時に生産、販売するときの  C  )であり、C(x1, 0)が第1製品だけを生産、販売するときの  C  、C(0, x2)が第2製品だけを生産、販売するときの  C  である。

[解答群]
(ア) A:>   B:+   C:総費用
(イ) A:>   B:-   C:平均費用
(ウ) A:<   B:-   C:総費用
(エ) A:>   B:+   C:平均費用
(オ) A:<   B:+   C:総費用

(設問2)
文中の下線部に関する記述として、最も不適切なものはどれか


[解答群]
(ア) 2つの事業がお互いに補い合って1つの物的資源をより完全に利用して生まれる効果は、範囲の経済の効果である。

(イ) 2つの事業がお互いに情報的資源を使い合うと、資源の特質から使用量の限界がなく他の分野で同時多量利用できるため、物的資源を使い合うよりも効率性の高い範囲の経済を生み出せる。

(ウ) 合成繊維企業が蓄積した自らの化学技術を使用し、本業の補完・関連分野の事業に進出するのは範囲の経済の例である。

(エ) 範囲の経済が生まれるのは、基本的には未利用資源の活用が原因であり、企業規模が大きいほど経済効果が良くなることを意味する。

(オ) 範囲の経済は、多角化が進みすぎると新たに進出した事業と企業の保持しているコア・コンピタンスとの関連性が希薄になって生じなくなる。

■解答

(設問1)
 ○  (オ) A:<   B:+   C:総費用

(設問2)
 ×  (エ) 範囲の経済が生まれるのは、基本的には未利用資源の活用が原因であり、企業規模が大きいほど経済効果が良くなることを意味する。

■考察

(設問1)について。

下線まで引いているくらいですので、「範囲の経済」が分からなければ(ピンと来なければ)解答できない問題かな、と思われます。早速「範囲の経済」をGoogleで検索してみました。

企業が製品数を増やしたり、事業を多角化するほど、1製品あたり、1事業あたりのコストが低下するという経営学上の定理。具体的には、1つの企業で複数の製品を生産したり、複数の事業に取り組むときに、そのコストの合計が、同じ複数の製品を別々の企業で生産したり、別々の企業で事業を行っている場合の合計と比べて相対的に低くなる現象を指している。これは同じ設備を利用できたり、管理費などの複数の製品や事業で重複する部分が削減できるためである。この範囲の経済性を追求することが、製品のラインナップを広げたり多角化を志向させる根拠と言われている。しかし、どのような場合も範囲の経済性が大きく働くわけではない。できるだけ重複して利用できる部分を多くし、範囲の経済性が大きくなる製品や事業の組合せが、シナジー効果(相乗効果)が高いと見なすことができる。 
(出典)KOTOBANK

"具体的には、1つの企業で複数の製品を生産したり、複数の事業に取り組むときに、そのコストの合計が、同じ複数の製品を別々の企業で生産したり、別々の企業で事業を行っている場合の合計と比べて相対的に低くなる現象を指している。"

と書かれているので、(設問1)は用語解説がそのまま答えになっています。

用語解説に、本文で使っている生産数量の変数x1とx2、および、同時生産を表す費用関数のC(x1, X2)、個別生産を表す費用関数C(x1, 0)及びC(0, x2)を入れてみたいと思います。

"具体的には、1つの企業で複数の製品を生産したり、複数の事業に取り組むときに、そのコストの合計[C(x1, x2)]が、同じ複数の製品を別々の企業で生産したり、別々の企業で事業を行っている場合の合計[C(x1, 0)+C(0, x2)]と比べて相対的に低くなる[C(x1, x2)]<[C(x1, 0)+C(0, x2)]現象を指している。"

という事のようです。

(設問2)について

相変わらず日本語が難しいです。

(ア)の「物的資源をより完全に利用して生まれる効果」というのは製造装置などでいう「稼働率を上げる」という意味だと思われます。Aの製品だけでは80%しか稼働できないが、Bの製品も受注して生産することで100%稼働にできる=物的資源のより完全な利用と理解しました。

ですから表現は正しいです。

(イ)の情報的資源は何を意味するのでしょうか?例えば顧客情報などでしょうか??情報資源を共有するという意味では、最近ではクラウドサービスのビジネスユースが注目されており、グローバル拠点の生産情報や営業情報などをクラウド上で管理する、といった流れも見受けられます。

クラウドで情報共有するという行為も、グローバルに展開された企業にとって、「範囲の経済」を生かすための手段の一つなのかもしれません。「範囲の経済」以外に、ほかの狙いもあるとは思いますが。

(ウ)くらい日本語が分かりやすいと助かりますね。

(オ)については、コングロマリットという企業体などで発生しているのではないか、と思われます。

コングロマリット (英: conglomerate) は直接の関係を持たない多岐に渡る業種・業務に参入している企業体のこと。複合企業とも。主に異業種企業が相乗効果を期待して合併を繰り返して成立する。
 wikipediaより引用

日本で言うと、京セラ株式会社が株式会社ディーディーアイ(現在はKDDI。KDDI株式会社の合併当初の旧商号。)を設立したのもコングロマリットの例の一つかと思います。

こういった場合は、コア・コンピタンスの関係が希薄であったりするので、範囲の経済は有効にはたらかなかったのではないかと推測しています。

という事は、消去法からも(エ)が最も不適切なのだと思います。

(エ) 範囲の経済が生まれるのは、基本的には未利用資源の活用が原因であり、企業規模が大きいほど経済効果が良くなることを意味する
未利用資源の活用が原因。という点も引っかかりますが、企業規模が大きいほど経済効果が良くなるというのは別問題な気がします。企業規模が大きいと「規模の経済」は働くかもしれませんが、範囲の経済は。。。んーという感じです。企業規模が大きいといろいろな製品ラインなどを持っているでしょうから必然的に範囲の経済が働きやすい環境になるとは思いますが、これとそれとは別問題、な、気がします。

未利用資源の活用という点も、別に、未利用資源だけを原因と特定する必要はない気がします。先ほどの稼働率の話で80%の内20%は未利用といえば未利用ですが、利用している資源だと思われますので。。。

この問題は私の中で、消化不良です。。。未利用資源ってどういったものを指すんでしょうか。

ところで、ここから先は問題の考察とはかけ離れるのですが、第6問で集中戦略の問題を解きました。ポーターによると集中戦略でコスト集中という考えがあり、こちらは逆に多角化による範囲の経済を謳っています。 多角化戦略はアンゾフですかね?

コストについて考えるとき、特定事業に対して、または、市場に対して、「どういった戦略が有効か」、という事を考えなければならないときの難しさを痛感する問題でした。

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