H23年 企業経営理論 第3問
■問題
企業の強みと弱みに関する分析フレームワークについての記述として、最も不適切なものはどれか。(ア) 経営資源の模倣には直接的な複製だけではなく、競争優位にある企業が保有する経営資源を別の経営資源で代替することによる模倣もある。
(イ) 経営資源やケイパビリティが競争優位を生じさせており、企業の内部者にとって競争優位の源泉との関係が理解できない場合、経路依存性による模倣困難が生じている。
(ウ) 経営資源やケイパビリティに経済価値があり、他の競合企業や潜在的な競合企業が保持していないものである場合、希少性に基づく競争優位の源泉となりうる。
(エ) 経済価値のない経営資源やケイパビリティしか保持していない企業は、経済価値を有するものを新たに獲得するか、これまで有してきた強みをまったく新しい方法で活用し直すかの選択を迫られる。
(オ) 成功している企業の経営資源を競合企業が模倣する場合にコスト上の不利を被るのであれば、少なくともある一定期間の持続的な競争優位が得られる。
■回答
× (イ) 経営資源やケイパビリティが競争優位を生じさせており、企業の内部者にとって競争優位の源泉との関係が理解できない場合、経路依存性による模倣困難が生じている。
■考察
私にとって、まず、日本語としてなにやら異常に難しい書き方がされているように思えるのですが・・・マルかバツかさておき、根本的に何が言いたいのかが分からなかったです・・・。とりあえず、紐解いて解釈していきたいと思います。まずは、私なりに用語を確認していきたいと思います。
経営資源の一般的な定義としては、ヒト・モノ・カネ・情報の4つを指します。
ヒト・モノ・カネ・情報というのも割とざっくりしているのでもう少し調べてみました。
経営学者ジェイ・B・バーニー氏によると、経営資源の企業属性は
①財務資本:金銭的資源
②物的資本:物理的技術,設備,立地,原材料へのアクセス等
③人的資本:従業員が保有する経験,判断,知性,洞察力,人間関係
④組織資本:組織構造,公式,非公式の計画,管理,調整のシステム,外部の他企業などとの関係等
としているとのことですが、詳しくは『企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続』という本に記載されているようです。私の場合一度こういった文献を読まないとだめなのかもしれません。
ケイパビリティーについても、これも用語は違えど結局のところ経営資源の一つの形だと思います。ここでは組織能力と訳してもいいかと思います。
「ケイパビリティー」(capability)とは、企業が全体としてもつ組織的な能力、あるいはその企業に固有の組織的な強みのことです。経営戦略を構成する重要な概念であり、競争優位の大きな源泉となりえます。戦略そのものによる差別化が困難な状況下においては、オペレーションの主眼となるスピードや効率性、高品質といった企業のケイパビリティーを活かし、戦略の実現性や遂行能力で他社に差をつけることが持続的な優位性の確立につながります。企業に固有のケイパビリティーを最大限活用した競争戦略を「ケイパビリティー・ベースド・ストラテジー」といいます。(2012/6/25掲載)
競争優位の源泉についていろいろ調べてはみているのですが・・・詳細をまとめるのは難しそうですね。中小企業診断士のテキストは購入しましたが、テキストのみでこの分野の理解に至るまでは困難な、というか不可能な気がします。
この第3問でいうところの競争優位の源泉の一つとしては、コア・コンピタンスがあげられると思いますし、理解が進みやすそうなのでひとまずは競争優位の源泉に"例えばコア・コンピタンス"という言葉を代入してみようと思います。
コア・コンピタンス(Core competence)とは、ある企業の活動分野において「競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力」「競合他社に真似できない核となる能力」の事を指す。
wikipediaより引用
経路依存性による模倣困難という用語についてはひとまず、"企業文化や歴史などの弊害に伴ってマネすることが難しい。"と代入してみますと、
経営資源(金銭や物理的技術など)や組織能力、それらリソースが競争優位性を生む。
従業員が競争優位性の源泉(たとえばコア・コンピタンス)とリソースの関係を理解できない場合、企業文化や歴史などの弊害に伴ってマネすることが難しい状況が発生している。
ここまで崩して思ったのが、おそらく、内部者を外部者に変えれば意味が通る気がしてきました。
おそらく、競争優位性の源泉がどのように形成されているか外部者が分析できないとき、その時は、経路依存性が発生している状況になっていると考えられるため、模倣することが不可能です。 それら競争優位性の源泉も含めて経営資源なわけですから、ケイパビリティも含めて経営資源が競争優位性を生んでいるんです。ということが言いたいのだろうと理解することにしました。
上記文面であれば概ねその通りだと思うので、適切ではないなと思われる個所としては「企業の内部者」という記述だと思います。
あと、個人的にわからなかった点として
(ア) 経営資源の模倣には直接的な複製だけではなく、競争優位にある企業が保有する経営資源を別の経営資源で代替することによる模倣もある。
がイマイチどういうケースなのかピンとこなかったのですが、この記事をまとめていて気が付きました。
例えばですが、最近の話では、アメリカのアップル社のiPhoneは経路依存性による模倣困難性があった(競争優位な状態で競争優位の源泉がiOS=コア・コンピタンス)ケースであると思われますが、別の資産の代替での模倣(この場合マネと言ってしまっては両社に対してけんが立ってしまいますので同一の製品ラインを指して言ってます)としてSAMSUNG社はOSをAndroidにしたギャラクシーで攻勢をかけた。というのがいい例だと思いました。
iOSには他社にはまねできない歴史があります。しかしながら機能や動作ではGoogle社のAndroidはスマートフォンという市場に対しての参入を果たすことができました。Androidがでることによって、OSの自社開発にかかるコストを下げることができたため、経営資源の代替でのSAMSUNG社も模倣が可能になったのだと考察します。故に(ア)の表現は適切なんでしょうね。
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