H23年 企業経営理論 第8問
■問題
完成品メーカーと部品供給メーカーとの企業間の取引には、常に競争と協調の両面が存在する。そのような企業間の取引で発生する事態についての記述として、最も不適切なものはどれか。(ア) 過剰な生産能力を持つ業界の部品メーカーA社は、過小な生産能力の業界の部品メーカーB社に比べて、高い利益率を獲得できる可能性は低くなる。
(イ) 部品メーカーC社は、4社の完成品メーカー各社に同じ量の部品を独占的に供給しているが、その部品の生産ラインにトラブルが発生したため、生産量を長期にわたって減らさざるを得なくなったにもかかわらず、利益率はむしろ増加傾向に転じた。
(ウ) 部品メーカーD社は、供給先の完成品メーカーE社との取引契約に、E社が他の部品メーカーに乗り換える場合D社に打診するという条項を結んでいるので、値引き要求や競合他社との受注争奪で有利になる可能性が高くなった。
(エ) 部品メーカーF社は、自社のみが生産できるある部品について取引の大きな完成品メーカーG社と最も有利な条件を自動的に適用するという契約書を結んでいるが、このことが他の完成品メーカーにも知られた結果、各社の値引き要求に屈して利益が激減してしまった。
■解答
(エ) 部品メーカーF社は、自社のみが生産できるある部品について取引の大きな完成品メーカーG社と最も有利な条件を自動的に適用するという契約書を結んでいるが、このことが他の完成品メーカーにも知られた結果、各社の値引き要求に屈して利益が激減してしまった。
■考察
(ア)は先日解いた第5問に似ています。結局のところ過剰な生産能力を持っている→生産設備を遊ばせている(稼働率が低い)→規模の経済が働かず単位原価が増す→高い利益率を獲得できる可能性は低くなる。という構図だと思われます。(イ)は2011年に起きたタイの洪水被害などの例が当てはまるのではないでしょうか。
タイは日系企業の進出が3100社以上と多く、アユタヤ県、ローヂャナ工業団地に工場を構えるホンダ、ニコンの他、トヨタ、日産など大手自動車メーカーやソニー、東レ、TDK、チョンブリ県のクボタなど多くの被害が報告されており、10月22日までに日系460社が被害を被った。
タイは世界シェア30%に及ぶ第2位のHDD生産国であり、HDDメーカー大手であるウェスタン・デジタルとシーゲイト・テクノロジー、生産に伴う部品供給元である日本電産、レンズメーカーのHOYAなどは共にタイ国内に生産拠点を抱えている。そのためIT産業、とりわけPCメーカーに大きな影響を与え、HDDの高騰に繋がっている。
HDDの価格は記憶では4倍以上まで高騰していたように記憶しています。生産量は激減して、売上高も下がっているとは思いますが、各社HDDが必要であるため価格は高騰し、結果利益率としては上がったのだろうと思われます。
(ウ)については「ラスト・ルック条項」と呼ばれる契約があるそうです。別のブログに解説があったのですがリンクの許諾を得られていませんので得られ次第リンクを記載しようと思います。
(エ)については自社のみが生産できる、という事ですので、他の完成品メーカーに知られたとしても値段は吊り上る可能性はあるものの値引き要求に屈さなくてはいけない理由はないはずです。
よくわからないのが"G社と最も有利な条件を自動的に適用するという契約書を結んでいる"というところなんですが、これは、他の完成品メーカーとの取引で有利な条件を提示されたらG社にもその条件を適用するという意味なのでしょうか?
もしそうだとすると、差別化された製品はやはり価値が高いですね。恐るべし差別化です。
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