2013年2月3日日曜日

H23年 企業経営理論 第6問


H23年 企業経営理論 第6問

■問題


中小企業ではニッチ市場に特化したり、特定の市場セグメントに自社の事業領域を絞り込んだりする集中戦略がとられることが多い。そのような集中戦略をとる企業の戦略対応として、最も不適切なものはどれか

(ア) 自社が強みを発揮している市場セグメントに他社が参入してきた場合、自社のコンピタンスをより強力に発揮できるようにビジネスの仕組みを見直す。
(イ) 自社製品の特性を高く評価する顧客層に事業領域を絞り込むことによって、これまでの価格政策を見直し、プレミアム価格を設定して差別化戦略に取り組む。
(ウ) 自社の得意とする市場セグメントに事業領域を絞り込むことによって、業界大手の追随を振り切ることができるばかりか、好業績を長期に維持できる。
(エ) 絞り込みをかけた事業領域の顧客ニーズが、時間の経過とともに、業界全体のニーズと似通ったものにならないように監視するとともに、顧客が評価する独自な製品の提供を怠らないようにする。
(オ) 絞り込んだ事業領域で独自な戦略で業績を回復させることができたが、そのことによって自社技術も狭くなる可能性があるので、新製品の開発やそのための技術開発への投資を強めることを検討する。

■解答

× (ウ) 自社の得意とする市場セグメントに事業領域を絞り込むことによって、業界大手の追随を振り切ることができるばかりか、好業績を長期に維持できる。

■考察

集中戦略という用語について確認したいと思います。
ポーターは3つの基本戦略を示しています。
  1. コスト・リーダーシップ戦略
  2. 差別化戦略
  3. 集中戦略

集中戦略はその一つで、集中戦略はさらに『コスト集中』と『差別化集中』に分けることができます。

ここで、
  • 『コスト・リーダーシップ戦略』と『集中戦略のコスト集中』の違いは何か
  • 『差別化戦略』と『集中戦略差別化集中』の違いは何か

について疑問を持ったのでさらに調べてみたところ、対象となる市場の考え方の違いのようです。
コストを低くする、差別化する、という手段は同じなのかもしれませんが、集中戦略の場合は、特定の市場に特化する『集中する』というのが大前提です。

ですから、

『うちの店はパンとうどんとラーメンを販売してるが、パンに絞って経営するぞ!(特定の市場に集中する事で、例えば、不採算事業を切り離すことでコストを下げたり、今までうどんやラーメンに充てていた研究費をすべてパンに充て、新しいパンを開発するなどで差別化したり、もしくは両方を実現したりする)』というのが集中戦略で、『パンもうどんもラーメンも全部小麦粉だ!大量に仕入れて材料費を安くしつつ、生産量を上げて固定費をさげ(規模の経済)、業界最安値を狙うぞ!大量に作るから、職人さんのスキルもおのずと上がって他社より優位になるだろう!(経験曲線)』というのがコスト・リーダーシップ戦略なのだろうと思います。

差別化戦略の場合も同じような考えで、真似しにくい(模倣困難性)商品をつくったり、ブランドイメージを確立する戦略であると理解しました。例えばですが、差別化戦略の場合、3つの事業をうまく融合して、『うどんラーメンパン』を開発したりするって事だと思います。『うどんとラーメンの汁がパンの中からあふれでるのに、パンがふやけない!』なんていう、物理的に解決困難な無理難題を技術的に解決して達成すれば他社がまねできないので差別化できた、という事になるかと思います。大前提として美味しければ(価値があれば)の話ですけど・・・。
集中戦略で「パン」という市場に集中してしまうと、ラーメンやうどんの味を追求できなくなることからも、上記のような差別化戦略と集中戦略の差別化集中は異なるという理解です。

話がどんどんそれている気がしますので本題に戻ります。

では、(ウ)のどこが不適切なのでしょうか?

集中戦略をとる企業の戦略対応

  • 自社の得意とする市場セグメントに事業領域を絞り込むことによって、業界大手の追随を振り切ることができる
  • 好業績を長期に維持できる

おそらく両方間違えているんだと思います。

まず、事業を集中して大手の追随を振り切るというよりは、大手との争いを避けるほうが近いように思えます。大手に対しては、生産量やシェア、ブランドイメージなどで太刀打ちできないので、少量生産しても利益がでるような事業体制にするために集中するのだろうな、という考えだというのが私の結論です。ですから、差別化同様争いに巻き込まれなくなるための戦略、もしくは、巻き込まれている状態でも影響を少なくする戦略が集中戦略かと思いました。

また、好業績を長期に維持できる、とすれば、差別化戦略に成功したパターンかと思います。ただし、『長期』というのをどのように定義するかにもよりますが、最近の産業の流れを見ていると差別化が実現した(何らかの破壊的なイノベーションを起こした)からと言って長期に好業績を維持できるとは限らないようになってきているように思えます。なんだか模倣の多角化、といいましょうか、単純な模倣ではなく、近年、『差別化された製品から類似する別の差別化製品が生まれている』ような気がします。

集中戦略の場合は「好業績を維持」というより、「安定した収益確保」のほうがまだ近い気がします。

という事で、差別化戦略で好業績を長期に維持できるか否かはおいておいて、(ウ)は不適切であるのだと思います。

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