2013年1月29日火曜日

H23年 企業経営理論 第4問

H23年 企業経営理論 第4問

■問題

企業は環境の競争要因を分析して適切な戦略行動をとろうとする。その際の環境分析について考慮すべき点の記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) コストに占める固定費の比率が高い製品の場合、企業は生産能力を最大限に活用しようとしがちであるため、業界は過剰生産に陥りやすいので、できるだけすばやくその製品を売り抜けて、業界からの撤退を図ることが重要になる。

(イ) 自社が必要とする部材の供給企業が減少すると、競合企業との競争のため調達価格がつりあがりやすいので、代替的な部材の調達や自社開発を検討することも視野に入れておくことが重要になる。

(ウ) 自社の製品やサービスと補完性のあるものを販売する企業と強いアライアンスがあると、顧客の望む価値を統合的に提供して競合他社にない競争優位を構築し得るので、このようなアライアンス相手を見出すことは重要になる。

(エ) 新規参入企業がもたらす追加的な生産能力は、消費者の購入コストの上昇を抑え、競合企業には売上の減少や収益性の低下をもたらすので、参入障壁の強固さや参入企業への業界の反撃能力を点検することが重要である。

(オ) 製品がコモディティ化すると、顧客のスイッチングコストが低下して、競合企業との価格競争が激化するので、差別化を目指すには一歩先んじた独自製品の開発とその販売を目指すことが重要である。

■解答

×  (ア) コストに占める固定費の比率が高い製品の場合、企業は生産能力を最大限に活用しようとしがちであるため、業界は過剰生産に陥りやすいので、できるだけすばやくその製品を売り抜けて、業界からの撤退を図ることが重要になる。

■考察

コストに占める固定費の比率が高い製品の場合、
  1. 企業は生産能力を最大限に活用しようとしがちであるため
  2. 業界は過剰生産に陥りやすい
ここまでは正しいと思います。


例えば製造業における生産工程を例に挙げると、『生産能力を最大限に活用』 = 『生産設備の稼働率を最大限に活用する』ことにあたるため、稼働率あげることに注力しすぎると、受注を超える生産を行ってしまった場合に過剰生産となり、在庫を抱える原因や、飽和による価格下落を招く恐れがあると考えています。

では、なぜ稼働率にこだわる必要があるのかについも調査して考察してみたいと思います。
固定費とは(外部サイト:ハピラボ)
5. 固定費って何?(外部サイト:決算書.com)
固定費を一言でいうと

固定費=売り上げの増減に左右されない人件費+経費のこと
ということであると理解できます。

(出典)日経BP社

には、損益分岐点の概念図が掲載されています。

固定費の比率が高い製品であればあるほど、売り上げが必要であることが分かります。売り上げが必要であるということは、なるべく多くの生産、すなわち、稼働率を上げる必要がある、ということになります。このような背景から固定費が高い製品→稼働率を高くしたい→過剰生産という流れになりがちでるということであると理解しました。

では、このような構図を持つ製品を持っている場合、「できるだけすばやくその製品を売り抜けて、業界からの撤退を図ることが重要になる。」ことが正しいのでしょうか?

極端な話ですが、その製品の固定費が高いとしても、シェアが100%で市場も広く、非常に競争優位性がある製品の場合は上記の限りではないと思います。固定費が高くても利益が出ていれば素早く売り抜けて撤退を図る必要はないと私は考えます。ですから(ア)は適切ではないのだと思います。

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