2013年2月16日土曜日

H23年 企業経営理論 第9問


H23年 企業経営理論 第9問

■問題

技術開発に必要な経営資源を「技術革新において中核となる技術上のノウハウ」とその「補完資産」とに分けて考えた場合、ハイテク・ベンチャー企業に関する記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) 多くの顧客に対して販売促進活動を行い、顧客からの注文を受けて製品を届け、対価を受け取っている企業は、補完資産としての販売力を自社で保有している。

(イ) 技術革新を商業化して経営成果として結実させるために必要なマーケティングやアフターサービスの活動に関する能力は補完資産として重要である。

(ウ) 少数の特定の顧客企業が自社の大部分の製品を購入している場合、補完資産としての販売力を自社で保有している。

(エ) ハイテク・ベンチャー企業の「技術革新において中核となる技術上のノウハウ」は中核能力として位置づけられ、その獲得は技術革新実現の必要条件である。

(オ) ハイテク・ベンチャー企業の「技術革新において中核となる技術上のノウハウ」を価値連鎖として完結するために、補完資産の外部への依存を考慮することは重要である。

■解答

× (ウ) 少数の特定の顧客企業が自社の大部分の製品を購入している場合、補完資産としての販売力を自社で保有している。

■考察

(ア)の、多くの顧客に対して販売促進活動を行い、顧客からの注文を受けて製品を届け、対価を受け取る、というのまさに販売力なので、補完資産としての販売力を自社で保有しているといえると思います。

(ア)に対して(ウ)は、少数の特定の顧客企業が自社の大部分の製品を購入している場合、という記述からして販売力を自社で保有しているとは言い難いと思われます。
販売力という言葉の定義を調べきれていませんが、私なりに販売力という言葉を定義すると、「新しいユーザーに製品の価値を提案し、対価を得る、または、既存ユーザーに新たな価値(使い方など)を提案し、対価を得る」 という感じかと思っています。

少数特定の顧客企業から大部分の製品を購入いただいているとなると、販売力ではなく商品力が高い商品を保有しているのかな?という印象を受けました。

平成23年度 C 企業経営論 正解・配点一覧

平成23年度 中小企業診断士 第1次試験
C 企業経営論
正解・配点
出典:社団法人 中小企業診断協会


問題 設問 正解 配点
第1問
2
第2問 設問1 3

設問2 3
第3問
3
第4問
2
第5問
2
第6問
2
第7問 設問1 2

設問2 3
第8問
3
第9問
2
第10問
3
第11問
3
第12問
2
第13問
2
第14問
3
第15問
2
第16問
2
第17問
2
第18問
2
第19問 設問1 2

設問2 2
第20問
3
第21問
2
第22問
3
第23問
2
第24問
2
第25問
3
第26問 設問1 3

設問2 3
第27問 設問1 2

設問2 3

設問3 2
第28問
3
第29問
2
第30問 設問1 2

設問2 3
第31問 設問1 2

設問2 3
第32問 設問1 2

設問2 3

2013年2月4日月曜日

H23年 企業経営理論 第8問


H23年 企業経営理論 第8問

■問題

完成品メーカーと部品供給メーカーとの企業間の取引には、常に競争と協調の両面が存在する。そのような企業間の取引で発生する事態についての記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) 過剰な生産能力を持つ業界の部品メーカーA社は、過小な生産能力の業界の部品メーカーB社に比べて、高い利益率を獲得できる可能性は低くなる。

(イ) 部品メーカーC社は、4社の完成品メーカー各社に同じ量の部品を独占的に供給しているが、その部品の生産ラインにトラブルが発生したため、生産量を長期にわたって減らさざるを得なくなったにもかかわらず、利益率はむしろ増加傾向に転じた。

(ウ) 部品メーカーD社は、供給先の完成品メーカーE社との取引契約に、E社が他の部品メーカーに乗り換える場合D社に打診するという条項を結んでいるので、値引き要求や競合他社との受注争奪で有利になる可能性が高くなった。

(エ) 部品メーカーF社は、自社のみが生産できるある部品について取引の大きな完成品メーカーG社と最も有利な条件を自動的に適用するという契約書を結んでいるが、このことが他の完成品メーカーにも知られた結果、各社の値引き要求に屈して利益が激減してしまった。

■解答

(エ) 部品メーカーF社は、自社のみが生産できるある部品について取引の大きな完成品メーカーG社と最も有利な条件を自動的に適用するという契約書を結んでいるが、このことが他の完成品メーカーにも知られた結果、各社の値引き要求に屈して利益が激減してしまった。

■考察

(ア)は先日解いた第5問に似ています。結局のところ過剰な生産能力を持っている→生産設備を遊ばせている(稼働率が低い)→規模の経済が働かず単位原価が増す→高い利益率を獲得できる可能性は低くなる。という構図だと思われます。

(イ)は2011年に起きたタイの洪水被害などの例が当てはまるのではないでしょうか。

タイは日系企業の進出が3100社以上と多く、アユタヤ県、ローヂャナ工業団地に工場を構えるホンダ、ニコンの他、トヨタ、日産など大手自動車メーカーやソニー、東レ、TDK、チョンブリ県のクボタなど多くの被害が報告されており、10月22日までに日系460社が被害を被った。

タイは世界シェア30%に及ぶ第2位のHDD生産国であり、HDDメーカー大手であるウェスタン・デジタルとシーゲイト・テクノロジー、生産に伴う部品供給元である日本電産、レンズメーカーのHOYAなどは共にタイ国内に生産拠点を抱えている。そのためIT産業、とりわけPCメーカーに大きな影響を与え、HDDの高騰に繋がっている。

HDDの価格は記憶では4倍以上まで高騰していたように記憶しています。生産量は激減して、売上高も下がっているとは思いますが、各社HDDが必要であるため価格は高騰し、結果利益率としては上がったのだろうと思われます。

(ウ)については「ラスト・ルック条項」と呼ばれる契約があるそうです。別のブログに解説があったのですがリンクの許諾を得られていませんので得られ次第リンクを記載しようと思います。

(エ)については自社のみが生産できる、という事ですので、他の完成品メーカーに知られたとしても値段は吊り上る可能性はあるものの値引き要求に屈さなくてはいけない理由はないはずです。
よくわからないのが"G社と最も有利な条件を自動的に適用するという契約書を結んでいる"というところなんですが、これは、他の完成品メーカーとの取引で有利な条件を提示されたらG社にもその条件を適用するという意味なのでしょうか?

もしそうだとすると、差別化された製品はやはり価値が高いですね。恐るべし差別化です。

2013年2月3日日曜日

H23年 企業経営理論 第7問


H23年 企業経営理論 第7問

■問題

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

単一の事業を営む企業が多角化によって事業構造を変革し、持続的な成長を実現する行動は、「範囲の経済」の視点から説明できる。「範囲の経済」が存在すれば、企業が複数の事業を展開することによって。それぞれの事業を独立に営むときよりも、より経済的な事業運営が可能になる。

(設問1)
文中の下線部に関する以下の文章の空欄A~Cにあてはまるものの最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。

2つの製品の生産量をそれぞれ x1、x2で表し、その費用関数をC(x1, x2)で表したとき、「範囲の経済」の関係は以下のように示すことができる。

C(x1, x2)   A   C(x1, 0)   B   C(0, x2)

この関係が成立すれば「範囲の経済」が存在する。この式のC(x1, x2)がx1、x2を同時に生産、販売するときの  C  )であり、C(x1, 0)が第1製品だけを生産、販売するときの  C  、C(0, x2)が第2製品だけを生産、販売するときの  C  である。

[解答群]
(ア) A:>   B:+   C:総費用
(イ) A:>   B:-   C:平均費用
(ウ) A:<   B:-   C:総費用
(エ) A:>   B:+   C:平均費用
(オ) A:<   B:+   C:総費用

(設問2)
文中の下線部に関する記述として、最も不適切なものはどれか


[解答群]
(ア) 2つの事業がお互いに補い合って1つの物的資源をより完全に利用して生まれる効果は、範囲の経済の効果である。

(イ) 2つの事業がお互いに情報的資源を使い合うと、資源の特質から使用量の限界がなく他の分野で同時多量利用できるため、物的資源を使い合うよりも効率性の高い範囲の経済を生み出せる。

(ウ) 合成繊維企業が蓄積した自らの化学技術を使用し、本業の補完・関連分野の事業に進出するのは範囲の経済の例である。

(エ) 範囲の経済が生まれるのは、基本的には未利用資源の活用が原因であり、企業規模が大きいほど経済効果が良くなることを意味する。

(オ) 範囲の経済は、多角化が進みすぎると新たに進出した事業と企業の保持しているコア・コンピタンスとの関連性が希薄になって生じなくなる。

■解答

(設問1)
 ○  (オ) A:<   B:+   C:総費用

(設問2)
 ×  (エ) 範囲の経済が生まれるのは、基本的には未利用資源の活用が原因であり、企業規模が大きいほど経済効果が良くなることを意味する。

■考察

(設問1)について。

下線まで引いているくらいですので、「範囲の経済」が分からなければ(ピンと来なければ)解答できない問題かな、と思われます。早速「範囲の経済」をGoogleで検索してみました。

企業が製品数を増やしたり、事業を多角化するほど、1製品あたり、1事業あたりのコストが低下するという経営学上の定理。具体的には、1つの企業で複数の製品を生産したり、複数の事業に取り組むときに、そのコストの合計が、同じ複数の製品を別々の企業で生産したり、別々の企業で事業を行っている場合の合計と比べて相対的に低くなる現象を指している。これは同じ設備を利用できたり、管理費などの複数の製品や事業で重複する部分が削減できるためである。この範囲の経済性を追求することが、製品のラインナップを広げたり多角化を志向させる根拠と言われている。しかし、どのような場合も範囲の経済性が大きく働くわけではない。できるだけ重複して利用できる部分を多くし、範囲の経済性が大きくなる製品や事業の組合せが、シナジー効果(相乗効果)が高いと見なすことができる。 
(出典)KOTOBANK

"具体的には、1つの企業で複数の製品を生産したり、複数の事業に取り組むときに、そのコストの合計が、同じ複数の製品を別々の企業で生産したり、別々の企業で事業を行っている場合の合計と比べて相対的に低くなる現象を指している。"

と書かれているので、(設問1)は用語解説がそのまま答えになっています。

用語解説に、本文で使っている生産数量の変数x1とx2、および、同時生産を表す費用関数のC(x1, X2)、個別生産を表す費用関数C(x1, 0)及びC(0, x2)を入れてみたいと思います。

"具体的には、1つの企業で複数の製品を生産したり、複数の事業に取り組むときに、そのコストの合計[C(x1, x2)]が、同じ複数の製品を別々の企業で生産したり、別々の企業で事業を行っている場合の合計[C(x1, 0)+C(0, x2)]と比べて相対的に低くなる[C(x1, x2)]<[C(x1, 0)+C(0, x2)]現象を指している。"

という事のようです。

(設問2)について

相変わらず日本語が難しいです。

(ア)の「物的資源をより完全に利用して生まれる効果」というのは製造装置などでいう「稼働率を上げる」という意味だと思われます。Aの製品だけでは80%しか稼働できないが、Bの製品も受注して生産することで100%稼働にできる=物的資源のより完全な利用と理解しました。

ですから表現は正しいです。

(イ)の情報的資源は何を意味するのでしょうか?例えば顧客情報などでしょうか??情報資源を共有するという意味では、最近ではクラウドサービスのビジネスユースが注目されており、グローバル拠点の生産情報や営業情報などをクラウド上で管理する、といった流れも見受けられます。

クラウドで情報共有するという行為も、グローバルに展開された企業にとって、「範囲の経済」を生かすための手段の一つなのかもしれません。「範囲の経済」以外に、ほかの狙いもあるとは思いますが。

(ウ)くらい日本語が分かりやすいと助かりますね。

(オ)については、コングロマリットという企業体などで発生しているのではないか、と思われます。

コングロマリット (英: conglomerate) は直接の関係を持たない多岐に渡る業種・業務に参入している企業体のこと。複合企業とも。主に異業種企業が相乗効果を期待して合併を繰り返して成立する。
 wikipediaより引用

日本で言うと、京セラ株式会社が株式会社ディーディーアイ(現在はKDDI。KDDI株式会社の合併当初の旧商号。)を設立したのもコングロマリットの例の一つかと思います。

こういった場合は、コア・コンピタンスの関係が希薄であったりするので、範囲の経済は有効にはたらかなかったのではないかと推測しています。

という事は、消去法からも(エ)が最も不適切なのだと思います。

(エ) 範囲の経済が生まれるのは、基本的には未利用資源の活用が原因であり、企業規模が大きいほど経済効果が良くなることを意味する
未利用資源の活用が原因。という点も引っかかりますが、企業規模が大きいほど経済効果が良くなるというのは別問題な気がします。企業規模が大きいと「規模の経済」は働くかもしれませんが、範囲の経済は。。。んーという感じです。企業規模が大きいといろいろな製品ラインなどを持っているでしょうから必然的に範囲の経済が働きやすい環境になるとは思いますが、これとそれとは別問題、な、気がします。

未利用資源の活用という点も、別に、未利用資源だけを原因と特定する必要はない気がします。先ほどの稼働率の話で80%の内20%は未利用といえば未利用ですが、利用している資源だと思われますので。。。

この問題は私の中で、消化不良です。。。未利用資源ってどういったものを指すんでしょうか。

ところで、ここから先は問題の考察とはかけ離れるのですが、第6問で集中戦略の問題を解きました。ポーターによると集中戦略でコスト集中という考えがあり、こちらは逆に多角化による範囲の経済を謳っています。 多角化戦略はアンゾフですかね?

コストについて考えるとき、特定事業に対して、または、市場に対して、「どういった戦略が有効か」、という事を考えなければならないときの難しさを痛感する問題でした。

H23年 企業経営理論 第6問


H23年 企業経営理論 第6問

■問題


中小企業ではニッチ市場に特化したり、特定の市場セグメントに自社の事業領域を絞り込んだりする集中戦略がとられることが多い。そのような集中戦略をとる企業の戦略対応として、最も不適切なものはどれか

(ア) 自社が強みを発揮している市場セグメントに他社が参入してきた場合、自社のコンピタンスをより強力に発揮できるようにビジネスの仕組みを見直す。
(イ) 自社製品の特性を高く評価する顧客層に事業領域を絞り込むことによって、これまでの価格政策を見直し、プレミアム価格を設定して差別化戦略に取り組む。
(ウ) 自社の得意とする市場セグメントに事業領域を絞り込むことによって、業界大手の追随を振り切ることができるばかりか、好業績を長期に維持できる。
(エ) 絞り込みをかけた事業領域の顧客ニーズが、時間の経過とともに、業界全体のニーズと似通ったものにならないように監視するとともに、顧客が評価する独自な製品の提供を怠らないようにする。
(オ) 絞り込んだ事業領域で独自な戦略で業績を回復させることができたが、そのことによって自社技術も狭くなる可能性があるので、新製品の開発やそのための技術開発への投資を強めることを検討する。

■解答

× (ウ) 自社の得意とする市場セグメントに事業領域を絞り込むことによって、業界大手の追随を振り切ることができるばかりか、好業績を長期に維持できる。

■考察

集中戦略という用語について確認したいと思います。
ポーターは3つの基本戦略を示しています。
  1. コスト・リーダーシップ戦略
  2. 差別化戦略
  3. 集中戦略

集中戦略はその一つで、集中戦略はさらに『コスト集中』と『差別化集中』に分けることができます。

ここで、
  • 『コスト・リーダーシップ戦略』と『集中戦略のコスト集中』の違いは何か
  • 『差別化戦略』と『集中戦略差別化集中』の違いは何か

について疑問を持ったのでさらに調べてみたところ、対象となる市場の考え方の違いのようです。
コストを低くする、差別化する、という手段は同じなのかもしれませんが、集中戦略の場合は、特定の市場に特化する『集中する』というのが大前提です。

ですから、

『うちの店はパンとうどんとラーメンを販売してるが、パンに絞って経営するぞ!(特定の市場に集中する事で、例えば、不採算事業を切り離すことでコストを下げたり、今までうどんやラーメンに充てていた研究費をすべてパンに充て、新しいパンを開発するなどで差別化したり、もしくは両方を実現したりする)』というのが集中戦略で、『パンもうどんもラーメンも全部小麦粉だ!大量に仕入れて材料費を安くしつつ、生産量を上げて固定費をさげ(規模の経済)、業界最安値を狙うぞ!大量に作るから、職人さんのスキルもおのずと上がって他社より優位になるだろう!(経験曲線)』というのがコスト・リーダーシップ戦略なのだろうと思います。

差別化戦略の場合も同じような考えで、真似しにくい(模倣困難性)商品をつくったり、ブランドイメージを確立する戦略であると理解しました。例えばですが、差別化戦略の場合、3つの事業をうまく融合して、『うどんラーメンパン』を開発したりするって事だと思います。『うどんとラーメンの汁がパンの中からあふれでるのに、パンがふやけない!』なんていう、物理的に解決困難な無理難題を技術的に解決して達成すれば他社がまねできないので差別化できた、という事になるかと思います。大前提として美味しければ(価値があれば)の話ですけど・・・。
集中戦略で「パン」という市場に集中してしまうと、ラーメンやうどんの味を追求できなくなることからも、上記のような差別化戦略と集中戦略の差別化集中は異なるという理解です。

話がどんどんそれている気がしますので本題に戻ります。

では、(ウ)のどこが不適切なのでしょうか?

集中戦略をとる企業の戦略対応

  • 自社の得意とする市場セグメントに事業領域を絞り込むことによって、業界大手の追随を振り切ることができる
  • 好業績を長期に維持できる

おそらく両方間違えているんだと思います。

まず、事業を集中して大手の追随を振り切るというよりは、大手との争いを避けるほうが近いように思えます。大手に対しては、生産量やシェア、ブランドイメージなどで太刀打ちできないので、少量生産しても利益がでるような事業体制にするために集中するのだろうな、という考えだというのが私の結論です。ですから、差別化同様争いに巻き込まれなくなるための戦略、もしくは、巻き込まれている状態でも影響を少なくする戦略が集中戦略かと思いました。

また、好業績を長期に維持できる、とすれば、差別化戦略に成功したパターンかと思います。ただし、『長期』というのをどのように定義するかにもよりますが、最近の産業の流れを見ていると差別化が実現した(何らかの破壊的なイノベーションを起こした)からと言って長期に好業績を維持できるとは限らないようになってきているように思えます。なんだか模倣の多角化、といいましょうか、単純な模倣ではなく、近年、『差別化された製品から類似する別の差別化製品が生まれている』ような気がします。

集中戦略の場合は「好業績を維持」というより、「安定した収益確保」のほうがまだ近い気がします。

という事で、差別化戦略で好業績を長期に維持できるか否かはおいておいて、(ウ)は不適切であるのだと思います。

2013年2月2日土曜日

H23年 企業経営理論 第5問

H23年 企業経営理論 第5問

■問題

企業の競争優位の源泉に関する記述として、最も不適切なものはどれか

(ア) 企業と顧客の間で情報の非対称性が大きな製品・サービスでは、通常、ブランド・イメージや企業の評判のような客観的にとらえにくい要因に基づく差別化の重要性が大きい。
(イ) 顧客が支払う意思のある価格の上限が顧客の支払い意欲を示すと考えると、通常、差別化による優位は顧客が自社の製品を競合する製品よりも高く評価しているという強みを持つことを意味する。
(ウ) コスト優位は競合他社よりも低コストを実現できるため、通常、競合他社よりも低価格で製品販売しても利益を確保できる強みを意味する。
(エ) コスト優位を確立した企業は、競合他社よりも常に製品1単位当たりのコストとそのコストの総額が低いため、低価格で製品・サービスを販売できる。
(オ) どのような差別化による優位をつくるかを考える際には、通常、環境の変化だけではなく自社の強みと顧客の範囲をどのようにとらえて定義するかが重要である。

■解答

× (エ) コスト優位を確立した企業は、競合他社よりも常に製品1単位当たりのコストとそのコストの総額が低いため、低価格で製品・サービスを販売できる。

■考察

まず、この問題で分からなかった用語として、「情報の非対称性」について調べてみました。

情報の非対称性
取引を行う際、商品等に関して当事者がもっている情報に当事者間で格差があること。 例えば、新品の商品が取引される場合、品質や性能がカタログ等によって示されており、価格を決定する情報は、売り手と買い手との間で「対称」であるといえる。それに対し、中古品の場合は、個体ごとに使用年数、摩耗や損傷の有無・程度などの情報が異なるため、価格を決定する品質情報に関して、売り手と買い手との間に「非対称性」が生じるといえる。 後者の場合、買い手は価値の低い中古品を、そうとは知らずに高い価格で買ってしまうおそれがある。しかし、後になって自分が損な取引をしたことに買い手が気づき、他の買い手も購入に対して慎重になると、中古品が売れなくなる可能性が出てくる。そこで売り手は、情報公開や何らかの品質保証を求められることになる。 このように、市場に情報の非対称性が存在する場合、その市場ではさまざまな問題が生ずる。逆選択やモラル・ハザードなどはその代表例とされている。
kotobankより引用

上記の解説には「中古車市場」が例に上がっています。他にもないか、いろいろ考えを巡らせてみましたが、飲食産業もそうかもしれないです。"食材のスペック値"がメニューに書かれていて、「今日は料理人のスペック5の食材スペック5の料理を食べよう!」と、いうような食事選びの経験は、少なくとも私はないです。

モラル・ハザードや情報の非対称性というキーワードに対してのコラムも掲載します。

(出典)PRESIDENT


「この店は有名だから美味しいに違いない」、「この店はランキング1位だから美味しいに違いない」などブランドイメージや評判でお店を選んだりしたことが、私個人は度々あるため、

通常、ブランド・イメージや企業の評判のような客観的にとらえにくい要因に基づく差別化の重要性が大きい。

が、まさにその通り、という事だと思います。 ですから(ア)は記述として適切だと思います。



では、(エ)がなぜ不適切なのか、について考えてみたいと思います



おそらくは「常に」という単語が致命的な間違いなのだと思います。 

とりあえずはシミュレーションでもして理解を深めてみたいと思います。仮想のA社、B社固定費、変動費を設定して比較してます。A社は大企業であり、B社はA社ほど大きくなく、唯一のライバル企業だと仮定しています。市場はこの2社によって占有されているとします



変動費については大量に材料の購入数量が多くなるにつれ、コストが減ると仮定しています。A社は大企業なので材料も安く仕入れることができるし、大きな工場を持っているため50万台を超える大量生産が可能です。大きな工場を持っているので固定費はB社に比べて高いです。

B社はA社に比べ小さな企業で材料を買うのもA社ほど値引きしてもらえませんまた、設備台数も少なく最大50万台までしか生産ができません。

市場が100万台需要のある市場だった場合で、A社のシェアが50%以上あればB社に比べてコスト優位性があるといえると思いますが、常に
  • 製品1単位当たりのコスト 
  • そのコストの総額
が優位であるといえるでしょうか。やはり「常に」は言い過ぎなんだと思います。市場が50万台の市場にまで落ちたり、第三者が参入してA社のシェアが減った時にはコスト優位性は損なわれます。

以上から、 (エ)は最も不適切である、と言えると思います。